日本初の社会起業に特化したビジネススクール社会起業大学。600人以上輩出してきた卒業生は今、どんな活躍をしているのか。林浩喜学長が話を聞いた。第12弾は社起大でソーシャルミッションを見出し、それをビジネスで実行に移したSEC METHODの申し子、山田育子さんだ。
山田さんは大企業勤務、中小企業への転職、独立起業と一歩ずつ駒を進めた人生を歩んでいる。その道のりは紆余曲折であったが、常に自らの「内なる声」を聞き、その声に正直に生きてこられた人という印象を受けた。
名門ミッションスクールでの6年(中高時代)→仏文を学んだ大学時代→超大手電機メーカー勤務→イベント企画制作企業勤務→独立→社会起業大学→キャリア転換→社団法人を起業
我々は社会起業家を、「自分らしさ」「社会課題」「ビジネス」の3要素を重ね合わせる
※SECMETHOD(セックメソッド)というオリジナル手法で育成しているが、山田さんの場合は以下のようになろう。
好奇心、関心に素直に向き合う(自分らしさ)×シニア世代の活性化(社会課題)×企業内外のシニア世代の研修(ビジネス)
浜っ子の山田さんは何不自由なく幸福な子供時代を送った。就職は男女雇用均等法の成立前で、事務職として某大手半導体メーカーに就職した。スイスやケニヤでの大型展示会への出張を機にイベントビジネスの面白さを知ることとなり、入社3年目で会議系イベント運営会社に転職した。まだ保守的なあの時代に異例の行動である。そこから直属上司の独立に合わせる形で転籍を決断し、その後20年以上死ぬほど働いたそうだ。そしてその会社の閉鎖に伴い、ついに独立を果たす。
40代後半であったが、いかなる時も自らの内なる声に素直に従う山田さんに迷いは無かった。2012年、日本政策投資銀行、一橋大学大学院、三井物産が共催する「CSVフォーラム」のイベント運営統括を担当する。そこで基調講演者として登壇したマイケル・ポーター教授のCSV(CREATING SHARED VALUEという概念と出会い、「本心で社会課題の解決に立ち向かう企業の応援をしたい!」と思うようになった。因みに、山田さんは、社会課題がビジネスになるとポーター教授が言うなら、そこに日本の企業が競争力を取り戻すチャンスになるのでは?と思ったのだそう。
自分個人としても社会課題の解決に取り組むべきだと考えた山田さんは、社起大の門をたたいた。その時点では取り組むべき社会課題やビジネスアイデアは何も決まっておらず、中小企業をどう応援するかといったテーマでクラスメートや講師と対話していた。山田さんにとり、社起大の最大の価値は定期的に会ってクラスメートと対話をするサードプレイスとしての「場」と、年齢、性別、経歴を超え志高く世の役に立ちたいと真剣に考える「仲間」だったという。そしてそんな社起大時代の偶然の出会いが彼女のソーシャルミッションを決定づけることとなる。その頃気にかかる人がいた。一流企業に勤務していたのだが、元気が無く、自信もなく、勇気も無く、思い通りの出世も実現できていないようだった。山田さんは正直に語る。その頃立ち上げた事業が軌道に乗っていなかったこともあり、「この人は私の鏡なのかもしれない」と。そしてどうにかしてこの世代を元気に前向きにしなければならないと考えた。他人評価に身を委ね、人生をある意味諦めた状態で60定年を迎えると、日本は不機嫌老人でいっぱいの高齢化社会になってしまう。それは最悪の社会課題だと。山田さんのソーシャルミッションは固まった。これまで全く経験のない人事コンサルティング系企業のドアをノックして回りキャリアを方向転換した。
方向の定まった山田さんは持ち前のバイタリティで、キャリアコンサルタントの資格も取得し、まずは研修会社とタイアップして50代のワークショップ型企業研修を開始した。また昨年には一般社団法人日本リーダーコーチ協会を仲間とともに立ち上げた。そこではシニア層を対象に昭和の俺について来い型ではなく、相手の話を聞き力を引き出すリーダーシップをフィードバックスタイルで伝える事を目的としたファシリテーションをしている。さらに個人で願望実現のコーチングにも多くの時間を割いている。そして余技で方眼ノート活用法の講座も実施されている。まさに八面六臂。ソーシャルミッションの実現に向けて全力投球の日々である。
最後に山田さんから起業を考えている皆さんへのメッセージをいただいた。
起業する、しないにかかわらず、大事なことは「その立ち向かおうとしている社会課題は本当に心から自分が取り組みたいものなのか?」に向き合うことではないかと思います。そして、それが心底自分が取り組みたいものならば、経験が…とかスキルが‥とか考えずに、まずできることから一歩踏み出す行動をしてみること。そうすれば一つ扉が開いて、あなたが行きたい方向に向かう次の扉がみえてくると思います。そのために大事なカギが3つあります。
①それをやることはあなた自身を幸せにするか?
②それをやると周囲も幸せになるか?
③それは社会を幸せにする活動か?
この3つの問いに、心からYES!と言えるなら、迷わず前に進んでみてください!
山田育子さん
社社会起業大学 第11期修了
林 浩喜
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