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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
アントニオ猪木が帰天した。ここ数年やせ細った姿を何度かテレビで見て、この日を予想してはいたが何とも寂しい。日本のバッテリー電池が落ちてしまったようだ。昭和の巨人の猪木は、プロレスラーとしてだけでなく自分の思想・信念を行動で示したインパクトのある人だった。まさにソーシャルミッションの塊のような人だった。少年時代からライブ観戦してきたプロレスラーとしての名勝負の数々を語り始めると収拾がつかなくなる。今日は猪木の残したアンセムとも言える「道」について語りたい。
現在の自宅のエリアに引っ越してきたのはもう20年前くらいだろうか。誰に教わったのか忘れたが、うまい蕎麦屋があるという噂を聞いて行ってみた。好物の鴨南を頼んでみたところこれが絶品。その後しばらくして隣にある小学校のPTA活動をすることとなり、学校帰りによくその蕎麦屋に通うようになった。そこに猪木の書があった。蕎麦屋に通う目的はうまい蕎麦を食すことは勿論、猪木の揮毫を眺めることもその1つだった。熱燗をやりながら猪木の書と対話するのは至福の時間だった。
その後、僕は人生の節目を経験することになったが、折に触れ猪木の書と対話し、鼓舞してもらった。大概1人で行ったが、たまに知人や部下を連れて行ったりしたが残念ながらあまり響いていない様子だった。命懸けで人生を格闘した猪木と近しい経験をした者でなければその真意が分からないのは当然かもしれない。さて、蕎麦屋にあった3つの書をご紹介したい。ファンには有名な書らしいのでご存知の方も多かろうが少々お付き合い願いたい。
この道を行けば どうなるものか
危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし
踏み出せば その一足が道となり
その一足が道となる
迷わず行けよ 行けばわかるさ
まるで禅宗の高僧のような文句だと思っていたが、実は一休の言葉だそうだ。そうあの一休さん。ずっと猪木オリジナルと思っていたのだが、最近そうだと知った。ここでいう「道」とはまさに人生を表し、迷いながらも勇気を持って一歩一歩、足跡を刻みながら前進してゆく。それが己だけの独立不覊の人生だ。最後の一行が心を軽くしてくれる。「いつまで悩んでもキリがないぜ。思い切ってジャンプしてみろよ、そうしない限りは何も分からないぜ」と。
リング外でも単独で北朝鮮に乗り込んだりイラクに乗り込んだりと、政治活動いや人道活動にも精力的だった猪木。自ら闘ったモハマド・アリにも比肩する、特定のカテゴリーに収まりきれない行動派の巨人だった。
運は勇気の無い者にはめぐってこない
何が起ころうとも総てに感謝
ありがとう
決断
今日は明日への贈りもの
いずれの書も決して美しいわけではないし、豪快なものでもないのだが、実に味のある正直な字句で、なぜかいつもホッとする。書を通じて檄を飛ばしてもらいつつ、なぜか安堵する。苦悩する中で自分の決断したことの背中を後押してもらう感じ、そして大丈夫だからやってみなよと言われる感じ、この人に言われたらやるしかないなという感じ。
うちは社会起業大学という社会起業家を育成する私塾だが、塾生、OBそして塾外プログラム参加者たちにもそのまま贈りたい珠玉の猪木アンセムだ。