メールマガジンご購読者の皆様
いつもメールマガジンをお読みいただきありがとうございます。
社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
村田さんが初めて口にした引退
ついに村田諒太さんが決断を下した。2月25日、実質上の現役引退を表明した。昨年4月のゲンナジー・ゴロフキン戦を「僕の中では最後と思っている」と公式の場で初めて語ったものだ。僕はホッとした。きっとそういう結論になるだろうとは思っていたが、ファンはもちろんボクシング業界の関係者には続行を期待する人も多かった。
実際僕が指導して頂いている元世界チャンピオンの方も、続行支持していた。理由を聞くと直近のゴロフキン戦(ラストファイトとなる)で、負けはしたが素晴らしかった内容にプロボクサーとしての国際的価値がさらに上がったこと、よってさらに大金を稼げること、ゴロフキンと再戦できればリベンジできるかもしれないことなどを仰っていた。しかし写真の顔の表情からは、決断をした後の晴れ晴れしさが感じられる。もうボクサーの顔ではなく、通常の社会人の顔だ。しかしイケメンだね村田さん!10年前の初対面の時以上に。笑
2月25日「第13回日本スポーツ学会大賞」の大賞授賞式にて
村田さんはそれ以上のことは来月の記者会見でコメントするようだが、この1年いやもっと長きにわたって自身と向き合い続けた結果出した答えだったのだと思う。ゴロフキン戦後には多分結論を出していたのだろうが、自分の気持ちの整理をつける日々だったのではないか。
これまで多くの日本人の世界王者は負けると呆気なく引退を表明してきた。当然だと思う。他のスポーツと違いプロボクシングは常に命懸けだ。減量で肉体を削ぎ取り、試合ではフルコンタクトで頭部や腹部を殴り合う極限の闘いだから。じっくり時間をかけて気持ちを整理されたのは、村田さんらしいと思った。
村田さんの魅力は、日本人にとりとてつもなく高い峰であるミドル級でオリンピックの金メダルの獲得、プロでも同級で2度もチャンプになった実力はもちろんのこと、自己の内面を表現できる言葉の力を持っていることだ。試合のない時には哲学書を読まれ、それを自分の生き方や試合に向けての自律に活かしている。発言内容から聖書にも親しんでおられるようだ。興味のない人からすれば気難しいボクサーと映るかもしれないが、僕には自分に真正面から向き合い、煩悶しながらも本気で我が道を生きているように感じられる。だから彼の闘う姿勢に共感を覚えるのと同時に自己投影して応援したくなる人なのだ。
プロ入りを決断するのにも1年かかったが、今回の決断もそうだった。プロ転向後、自分のスタイルを見失い苦しんだ時期があったが、そこを乗り切った。世界チャンピオンになった後も低迷期があったが、そこも乗り越えた。そして最後の闘いとなったゴロフキン戦では自分の全てを出し切った。ゴロフキン戦での未練、タラレバの世界はもう霧消しているだろう。お金にも未練は無いのではなかろうか。精神的な満足の源泉である「弱い自分の克服」を追求してきた人だから。そしてその目標も達された。もっとも彼は今後どんな取り組みをしても成功できる人だと思う。次のビジョンは何だろうか?来月開かれるという記者会見が今から待ち遠しい。
過去、村田さんについて書いたROCKY通信記事はこちらからご覧いただけます。