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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
起業の仕方には様々なカタチがある。今日は夫婦起業について述べたい。
結論から先に言うと、夫婦起業というのは経営資源が潤沢でなく事業協力者も不足する中で、一つの理想のカタチだと思う。当然ではあるが、そこにはプラスだけでなくマイナス面もある。しかしそこを乗り越える所に、単に起業の成否を問う以上の何らかの意義があると感じている。そこには夫婦としての成長があるからだ。スタートアップという船出において、ある意味一つの理想型だと言える。
例を挙げれば、ハナエモリ、アート引越しセンター、ミキハウスから最近ではアパホテルの創業夫婦が挙げられるが、実際起業した人の4割弱が配偶者を巻き込んでいるというデータもある。ハナエモリの森英恵さんご夫妻は、英恵さんがデザイナーとしてフロントマンになり、ご主人の賢さんが経営面を裏方で支え、日本人のアパレルブランドとして初めて欧米で成功を収めることとなった。
そもそも歴史的にも起業の起点は、洋の東西を問わず夫婦や兄弟、親子をベースとするファミリービジネスが多い。スタートアップで大事なのは自らが果たすべきミッション、実現したいビジョンもあるが、生計という現実的な課題もある。
その優先順位は人それぞれだろうが、順位はどうであれスタートアップで最も大事なのはメンバー間の「信頼」だ。そこには血縁や夫婦というカタチ以上に単純にそれを実現できる手段は他に思い当たらない。まさに人生の運命共同体だ。
ここで夫婦起業のプラスマイナスを列挙してみたい。
プラス
・信頼関係
・好採算性
・異なる強み
・夢の共有
・働き方の融通性
・共有時間の最大化
・他者からの共感
マイナス
・仕事上で起きた考え方の違いが家庭内にも波及する
・家計収入のポートフォリオのリスク
・仕事と家庭のオンオフの切り替えが困難
・従業員ができ始めたときに気を遣わせてしまう
ざっと見ていただいてわかると思うのが、プラマイはコインの裏と表の関係性。要はどういうアングルから解釈するかだ。
それを差し置いても夫婦起業に賛同派なのは、実利面以上に本来助け合って生涯を共にするという夫婦のあり方からすると、それを実践するわかりやすいカタチだからだ。外貨獲得する亭主、家庭を守る専業主婦というかつての理想像は少なくとも日本ではもはや実現困難になっている。特定の富裕層を除けば育児、介護まで含めた家事は夫婦で協働して乗り切っていくしかない。
そのためには相手を認め、受け入れ、支え合うという姿勢が必要となる。スタートアップを共にするということは、夫婦という最小の社会単位を共にするという方向性と合致する話だと思う。
スタートアップし事業が軌道に乗り始めると、成長ステージに入る。ここでは夫婦には明確な役割分担が必要になる。どちらがフロントマンなのかを周囲に明示し、社員の混乱を避け、それぞれの役割を全うしてゆかねばならない。事業ステージの進展に伴い、それぞれが果たす役割を明快にする必要がある。ここを誤らないようにしなければならない。
実は、自分の起業もそうだった。ビジョンすなわち目指す世界観を強く後押ししてくれ、オペレーションに協力してくれたのが配偶者だった。上記のメリット・デメリットも経験し、実に色々なことがあったが、スタートアップ時におけるパワーの最大化に寄与してくれたのが夫婦起業というカタチであった。