<きぬまき ちえさん プロフィール >
埼玉生まれ。大学卒業後、マダガスカルに2年間赴任した後、開発学を学ぶためフランスに修士留学。外務省やJICA、開発コンサルタント等での業務を通じ、計15年以上アフリカの開発援助に従事。援助ではなくビジネスを通じた自立的経済発展の重要性を実感し、起業を決意。社会起業大学での学びを経て、2015年11月に友人と共同で株式会社ミアラカを設立。

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“援助”ではなく“ビジネス”で解決する貧困問題

 ラフィアという天然素材を知っていますか? ラフィア椰子の葉を乾燥させたもので、夏物のバッグなどに使われています。丈夫で長持ちで、使い続けると美しいつやがでてきます。今、私が立ち上げようとしている事業は、このラフィア椰子が豊富に生息するアフリカのマダガスカルでバッグを生産し、日本で販売するというものです。何十年たっても貧困から抜け出せないマダガスカルの女性たちに雇用を生み出し、自らの手で経済発展していけるよう、自立の支援を目指しています。
 私はこれまで仕事を通して、アフリカ地域の途上国支援に15年以上携わってきました。アフリカに興味を持ったきっかけは、学生時代に「なぜ世界の半分が飢えるのか」という本を読んで、南北問題を考えるようになったことです。
 大学卒業後、マダガスカルの日本大使館に勤務していたとき、ショックを受ける体験がありました。現地の外国人駐在員はお手伝いさんを雇うのが習慣で、私にも掃除などをしてくれる方がいたのですが、多くは幼い子供達を置いて地方から出稼ぎにきているお母さんでした。そのお母さんたちは、なんと家賃を浮かすために部屋を借りずに、近所のガレージで寝泊まりしていたのです。できるだけ多くのお金を子供達に送るためでした。
 マダガスカルの国家歳入の半分はODAなど外国からの援助に頼っています。しかし国民の生活はなかなか良くなりません。政治紛争が頻繁におき、クーデターが周期的に発生するので、その度に援助がストップしてしまいます。また、日本のODA自体にも問題があります。近年、アフリカ諸国は10億人の巨大市場として、また資源供給先として日本企業から注目されています。そのため、日本政府が援助を実施する際に、援助の効果・効率性という観点よりも、その援助を実施することで日本企業にいかなるメリットをもたらすかということが最優先されているのが現状とも言えます。
 日本の繊維製バックの輸入総額は約70億円ですが、そのうちマダガスカルからの輸入は0.1%未満です。ラフィアは世界の有名ブランドが素材として活用しており、ビジネスチャンスは十分にあると思います。マダガスカルで成功できたら、他のアフリカ諸国にもこのビジネスを広げて行き、”援助に頼らないアフリカ”を目指したいと思っています。

漠然としたアイディアが、リアリティを持って動き出す

 社会起業大学へ入る前の数年間、漠然とこの事業を始めたいと思ってはいましたが、それまで事業プランを作成したこともなく、どのように起業したらよいかわかりませんでした。そんなとき、たまたまインターネットでこの学校のことを知り、立ち上げ準備のために入学することにしました。
 授業では、事業プランに色々な要素を盛り込み、皆の前で発表してはフィードバックをもらい、ブラッシュアップしていきます。サービスや商品の内容だけでなく、創業のビジョンやミッションなども大切です。「マダガスカルのラフィア製バッグを通じて、日本の女性をさらに美しくし、そしてマダガスカルの女性に雇用と現金収入をもたらすこと」をミッションに、「アフリカ諸国の経済的自立を支援する」というビジョンを設けることにしました
顧客像は30代-50代の働く女性をイメージしました。この世代の働く女性向けのファッションブランドが少ないと思うからです。また、おしゃれな人と言えば季節感のある人だと思うのですが、夏向けのビジネスバッグはあまり売っていません。天然椰子の葉を乾燥させた自然素材であるラフィアは軽くて丈夫な上、長持ちです。ラフィア椰子はもともとマダガスカルが原産であり、マダガスカル産ラフィアは、シャネルやプラダ等の高級ブランドにも使用されるほど、世界的にも評価が高いのです。大いにビジネスチャンスがあると思います。
 このように日々授業に臨み、仲間の意見を受けとめ、ビジネスプランを少しずつブラッシュアップし続けました。そうしているうちに、どんどん自分でもプランの実現性が見えてきて、社会起業大学主催のビジネスコンテストである「ソーシャルビジネスグランプリ2015夏」ではファイナリストに選ばれ、共感大賞までいただいてしまいました。公衆の面前でやると言ってしまった以上、やらないわけにはいかない状況です。入学したときは、「本当に私できるのかな」という感じだったのですが、実際に現地にも赴き、現地のパートナーを見つけるなど準備も整ったので、2015年11月、志を共有する友人と共同で会社を立ち上げました。社名は、“株式会社ミアラカ”と言います。“ミアラカ”とは、マダガスカル語で「一緒に」という意味です。決して上から目線ではなく、現地の人々と協働して、今の貧困状況を少しでも改善して行きたいという思いを込めました。この学校に入るまでは漠然としていたことが、この学校に入ったことで実現に向けて具体的にスタートすることができました。

卒業後に始まった、本格的なスタートアップ

 グランプリまでは授業の一環として課題をこなすために事業計画を立てているという感じだったのですが、ここからが本格的なスタートという感じでした。 事業を軌道に乗せるためにやるべきことを一つひとつ具体的に考えていくと、実はそんなに簡単なことではありません。販路をどうするかとか、ラッピングはどうするかとか、細かいことを決めなくてはいけません。また在庫を保管するための倉庫もありませんし、商品を検品した経験もありません。計画段階では、ちょっと日本向けにデザインを改良すれば売れるのではないかと考えていましたが、売れるデザインとは何なのかと考えると、そこが一番難しいところだったりします。解決していかなくてはいけない課題はたくさんあるのですが、色々な経験のある他の学生さんたちとも積極的にネットワークを築き、アドバイスをもらいながら毎日奮闘しています。
 最近、現地のパートナー探しと試作品作成のために10年ぶりにマダガスカルに行きました。そこで驚いたことは、首都の街並みが10年前と殆ど変わっていなかったことです。今の時代に10年間変わらない都市があるのでしょうか?国民生活はむしろ悪くなっていると思いました。10年前は、夜間でも少し気を付ければ外出できたのですが、今では、貧困のためか治安が悪くなり、現地の人でも夜間は殆ど外出できなくなってしまいました。統計的にも貧困率が上がっており、何とか彼らの自立を支援したいと改めて強く感じました。

社会起業大学は“背中を押してくれる存在”

 起業は全く未知の領域に踏み込むようなものです。これまで保守的な組織の中で働いてきた私にとっては、たくさんの困難の壁を見ると思わず立ちすくんでしまうこともしばしばです。そんなとき、この学校で知り合った仲間に相談することで、どうにか道を見つけ出し、また前に進んでいけるように背中を押してもらっています。
 アフリカのために、自分自身のために、時に仲間の力を借りながらも着実に前進していきたいと思います。



(撮影・記事 堀口美紀 http://mikihoriguchi.com/blog/ )


卒業生インタビュー

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卒業生のビジネスプラン

2010年の開校以来、卒業生はすでに300名を超え、60を超える社会起業家を輩出しています。


  • 「若者が町の課題解決に活躍できる」社会を創る
    特定非営利活動法人SET
    理事長 三井 俊介さん


  • 大人のひきこもり オルタナティブ・ライフ・プログラム
    一般社団法人COYOTE
    代表理事 川初真吾さん


  • ミャンマーから医と食で命を繋ぐ
    NPO法人 ミャンマー ファミリー・クニックと菜園の会 名知仁子さん


  • 女性が育児と仕事を両立し、自己実現出来る社会をつくる
    Brilliant Mother 代表
    三輪 恭子さん


  • 個性あふれる社会を創る 「つなぎなおし」プロジェクト
    つなぎなおしプロジェクト
    代表 木戸佑兒さん


  • 学生と社会人で「何のために働くのか」を気楽に真剣に語り合う場
    ハタモク(NPO法人申請準備中)
    代表理事 與良 昌浩さん


  • 介護分野の人手不足を解消し、高齢世代の雇用を創出する
    株式会社かい援隊本部
    代表取締役会長 新川 政信さん

  • ビジネスパーソンがやりがいと使命感を実感できる社会づくり
    都内大手企業 CSR推進委員会事務局長 山田由美子さん