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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
藤藪庸一さんと初めてお会いしたのはもう3年前になる。たまたまNHKで拝見し、どうしてもお会いしたくなり電話してみたらご快諾をいただき、南紀白浜まで行ってきた。藤藪さんの本職はキリスト教の牧師だ。神への奉仕という精神に基づく社会起業家としての活動をされている。本人はご謙遜されるが、その活動内容は社会起業家そのものだ。今年最後の特別対談は、キリスト生誕を祝うクリスマスの12月ということもあり、今年の大トリとして藤藪さんの講話を聞かせていただこうと思う。
藤藪さんは小学校の卒業文集に、「自分は将来牧師になる」と書いたそうだ。白浜教会の先代牧師だった江見氏が困っている人々を救うのを幼少期から見てきた藤藪さんは、その生き方を引き継ぐことになる。「お金は私にはない。しかし私にあるものをあげよう」というバイブルにあるイエスの言葉が牧師としての原点となった。そして牧師としての仕事をベースとしつつ取りくまれているのが「NPO白浜レスキューネットワーク」の活動だ。
自殺志願者を思いとどめさせ、教会付属のシェアハウス(民家)で共同生活をさせること。ここでの生活を通じて他者との社会性を回復させるのだ。シェアハウスには元ホームレス、引きこもり、家庭崩壊者等々いろいろなバックグランドの人々が保護されてやって来る。日々の生活は必ずしも平穏なものでは無いが、徐々に孤独や諦めの痛みを癒される。
そしてここが肝心なのだが、その生活費用を捻出するために「まちなか食堂」という仕出し弁当屋(テークアウト、イートインも可)を彼らとともに運営しているのだ。仕事を覚え、他者との連携が可能となり社会性を回復したと藤藪さんが判断した時に、天引きしていた給料をまとめて手渡し、シェアハウスを卒業し自立を果たす。まさに「社会課題の根本解決」の好事例だ。
藤䉤さんが救ってこられた自殺志願者は1000人を超える。白浜には「三段壁」という観光名所の断崖絶壁があるのだが、ここは自殺の名所でもあり近畿の人々を中心に人生を諦めた人々がやって来る。その脇には「いのちの電話」と言われる公衆電話が設置されており、そこから藤藪さんの携帯に自殺志願者が「最後の一言」や「迷いの一言」を語り掛けてくる。まさに24時間の待機体制で保護に向かう。
僕が訪問させて頂いた時も深夜まで住人の相談を受けたり、遠方からの相談電話もあった。早朝からは弁当屋に出掛け、「この方は一体いつ寝ているのだろう?」と思った。眠る時間以外はプライバシーの無い生活。日中も行政の人が頻繁に出入りしていたし、外出も多かった。平日毎夜行われる小学生相手の「放課後クラブコペルくん」という学習指導もある。大きなお世話と知りつつも、あまりご無理をなさらないようにと時々メールしていたのだが、今春、NHKの番組で大病を患ってしまったことを知り、本当にずっと心配していた。
NPOの運営に関しては相当なご苦労をされてきたそうだ。商売にはつくづく向いていない人間だとご本人は苦笑される。ビジネス経験も無く、調理経験も無い中で始められた仕出し弁当屋「まちなかキッチン」は奮闘の甲斐あって月間3000食以上の弁当を提供する地元屈指の名店となった!神の恵みのおかげと謙虚におっしゃるが、視聴者の皆さんは多くの示唆やヒントを頂けると思う。その辺りの苦労話や人間ドラマについても今回の特別対談でお聞きしてみたい。
藤藪さんは「誰ひとり取り残さない世界」の実現に向かい日々闘っている。愛という自己犠牲を払いながら。まだ40代の若き牧師の生き方を同世代の人々にもぜひ知っていただきたいし、もちろんシニアや若者の指針にもして頂けると幸いだ。
藤藪さんの活動は、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」他教育チャンネルでも何度も取り上げられています。また、ドキュメタリー映画「牧師といのちの崖」も2019年に公開されました。
『牧師といのちの崖』公式HP
著書「あなたを諦めない 自殺救済の現場から」フォレストブックス刊これは藤䉤さんの赤裸々な活動記録と内省が交錯した名著です。ぜひ皆様にもご一読して頂きたいです。
今年最終回!12/1(水)19時 開催!
【クリスマス特別対談】
信仰と社会起業- 牧師といのちの崖 –
ゲスト:牧師・NPO法人白浜レスキューネットワーク理事長 藤藪庸一さん
日時:12/1(水)19:00-21:00
詳細・お申込:https://360-vr.sakura.ne.jp/sec/20211201_sptalk