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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
先週は宇沢弘文氏のご長女、占部まり氏による特別対談を開催した。トピックは本題の社会的共通資本(SDGsの源流)だけでなく、宇沢弘文氏の幼少期から学生時代の話、昭和天皇や前ローマ教皇ヨハネ・パウロⅡ世との伝説的なやりとり、シカゴ大学教授時代のミルトン・フリードマンとの痛快なマル秘ネタ、SDGs誕生にまつわる秘話、まり氏の専門分野の医療における社会的共通資本の話などなど実に盛りだくさんで、あっという間の2時間だった。とても濃い中身だったこともあり、オーディエンスの皆様からも非常にご好評をいただいた。興味のある方は末尾にある方法でアーカイブをご覧いただきたい。
一高から東大大学院生にかけての青春時代のお話は興味深かった。中でも宇沢先生の医学→数学→経済学という専門分野の変更だ。宇沢先生ほどのお方でも最終的に経済学に辿り着くまでに様々な葛藤があり、ドラマチックな変遷があったのだ。「経済学を通じて世の中をより良くする」というソーシャルミッションに至る道は、我々凡人がいくつかの職業を経て辿りつく天職に近いものがあり共感を覚えた。
また今回のまり氏のお話で最も心に残ったのは、宇沢先生が敬愛していたというイギリスの経済思想家ジョン・スチュアート・ミルの「定常状態」という概念だ。それは「経済が右肩上がりでなくても成立する豊かな社会」。とてもシンプルなものだが、まさにこれから日本が目指すべき価値観。そして成熟期にある先進国の多くにも当てはまる。宇沢先生の社会的共通資本のベースとなっているようなことをまり氏もおっしゃっていた。今後この内容について自分でもしっかりと考えてゆきたいと思った。
質疑では「宇沢先生は資本主義と社会主義の比較論を展開されてきましたが、その先にある新たな世界観は模索されていたのですか?」とお聞きしてみたところ、「それが社会的共通資本です」と即答を頂いた。やはり宇沢先生のライフワークが社会的共通資本の提起だったのだと今更ながら再認識した。経済学者は数多く存在するが、日本人でオリジナルのコンセプトを打ち出した人は本当に少ない。あらためて敬服した次第である。
ラスト10分では、エッジの効いた宇沢語録を一気に解説してくれた。下記内容がそれなのだが、個人的には特に最後のメッセージに大きく頷いてしまった。当てはまる歴史上の人物が何人も頭に浮かんだ。しかしここでいう変人とは、単なる奇人変人のことを指すわけではない。「いかなる状況にあろうとも自分の考えや行動、そして存在を信じきることの出来る人々」のことだと解釈した。他者になんと言われようとも、どう見られようとも己のミッションを、信じる道を邁進する気骨のある人だ。龍馬の「我が成すことは我のみぞ知る」に近いかもしれない。そして宇沢先生もその1人であることは間違いない。
「群れない」
「わからない」
「企業の社会的責任」
「前提条件を確認せよ」
「寄り添うという言葉の落とし穴」
「公のためというと弱者にしわ寄せがいく」
「変人が世の中を変え凡人がそれを支える」
※社会的共通資本
一つの国ないしは、特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような自然環境や社会的装置。そのような大事なものはお金に変えてはいけないという考え。
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【 イベント・書籍のご案内 】
◆ 8/24(火)占部まり氏 開催イベントのご案内
宇沢弘文を読む―社会的共通資本から現代の課題を考える
第8回「社会的共通資本としての自然ーサンゴ礁を手がかりに」
日時:8/24(火)19:00-20:30 (来場・オンライン同時開催)
http://hillsideterrace.com/events/10909/
◆ 7/28(水)社会起業大学 学長特別対談アーカイブはこちら
資本主義を超えた新しい社会のために、宇沢弘文が未来に伝えたかったこと
-SDGsの源流、社会的共通資本-
ゲスト:宇沢国際学館 代表取締役 占部まりさん
https://360-vr.sakura.ne.jp/sec/20210728_sptalk
◆ 対談にて占部まり氏から推薦いただいた書籍 2冊のご紹介
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