メールマガジンご購読者の皆様
いつもメールマガジンをお読みいただきありがとうございます。
社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
先週、知的障がい者の生活支援施設である川崎市の「NPO法人チャレンジサポートプロジェクト」が運営するグループホームを訪問し、理事長の北村さん、副理事長の松岡さんよりお話を伺わせて頂いた。お二人は知的障がい者のお子さんを持つ当事者であり、お子さんの通う養護教育施設で出会われ環境改善、生活支援の為に2013年にNPOの同法人を立ち上げられた。今日はそこで聞かせて頂いた内容をROCKY通信読者と共有させて頂きたい。
まずグループホームとは、様々な年齢層の知的障がいを持つ方々が介護職の方とともに1軒屋で共同生活を営む場である。各人が個室を持ち、ダイニングやお風呂、トイレといった共同スペースからなるシェアハウスに近いコンセプトだ。昼は各自それぞれの仕事に出向き、夜から朝にかけて共同生活になるというライフスタイルを送る。
写真の通りとても家庭的な雰囲気で、まさに“ホーム”という印象だ。
立ち上げ当初はまさに徒手空拳で、日々のオペレーションはもちろん行政とのやりとり、親御さんとのコミュニケーション、そして地主・近隣の人々との関係構築も含め分からぬことばかり。まさに「やってみないとわからない」を地で行くものだった。
これまで、養護学校を出た後は、山奥に存在する福祉施設に入るしか選択肢がなかったそうである。お二人は自立支援法制定後、障がい者がより日常的な環境で就労可能となる点も考慮し、「町に戻ろう」という考えのもとグループホームを作ることを考え実行する。潜在的ニーズは高く、川崎市だけで1000人の待機がかかっているとのことである。お二人はここに大きな社会課題を見出しており、どうにかして解決したいと切に望んでいる。
というのは、同じ介護でも例えば老齢者介護は終わりが見えるのに対し、知的障がい者の介護にはそれが無いことが決定的に異なるからだ。言われて初めてハッとさせられた。僕と同年代のお二人はプレシニアであり、継続性をもって自分の子供、そして施設にいる障がい者、施設を必要としている人々と残りの人生をともに伴走することは出来ない。
拠点づくりは大事だが、運営を含めた支援体制をシステム化してゆかないと根本解決は出来ない。究極はさらなる法整備や、国民の意識改革まで必要になってくるであろう。
行政も一定以上の協力支援は今のところ期待は出来ない事情もあり、お二人も苦心されている。この7年の不断の運営努力の結果多くの知見を得られたいま、次の新たな展開に繋げてゆかねばならないと思っておられるのだろう。まずはこの問題解決に一緒に取り組む仲間、同志を募りたいと考えられ、今回社起大にお声掛けを頂いた次第である。
「社起大であればこの社会課題の解決に共に取り組んでくれる生徒やOBOGがいるのでは」とご期待されてのことである。異業界からの参加者はむしろ歓迎だそうである。松岡氏は「大変さもありますが、やり甲斐のあるそして面白さもある仕事です」と胸を張る。その語気には真実を感じた。
NPO法人チャレンジサポートプロジェクト HP
https://npo-csp.com/about/
北村理事長のお話で印象に残ったのが、お子さんが障がい児であったことから、他者との対話では「すみません」「ごめんなさい」「ありがとうございます」の繰り返しが常態化し、知らず知らずのうちに卑屈になりがちだったそうです。そして孤立化してゆくのを感じたとも言われていました。ひょっとすると障がい者自身と同じくらい、もしくはそれ以上に心身のご苦労をされてきたのではと感じました。
僕自身、今回の問題に無関心だったつもりはありませんが、無知であったことを認識しました。自分も含め、より多くの人々が他人事としてではなく、同じ人間として少なくとも関心だけは持ち続ける必要があると痛感しました。
さあ今日も拳を上げて前進だ!