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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
社起大OGでミャンマー南部の無医村地域で医療活動を中心に行うNGO代表の医師名知仁子(なちさとこ)さんとZOOMで面談することができた。軍部によるデモ弾圧で数十人もの一般人が無差別殺害され、病院も軍に占拠され、メディアもコントロールされているので何が真の情報か分からない状態に陥っているそうだ。
行動制限が加えられ、代表的なSNSは使用禁止、インターネットは夜の1時から朝9時まで禁止、外出も夜8時から朝の4時まで禁止とのこと。ネットの接続時間が限定的であることが最も仕事の障害となるようで、日々睡眠は3時間半しか取れず、かなりお疲れのご様子であった。
名知さんはマザー・テレサに影響を受け、国際医療の道を歩んできた。現在は「ミャンマー ファミリー・クリニックと菜園の会(NGO)」の代表であり、ミャウンミャという地区で医療活動に従事されている。今日は名知さんのヒューマンストーリーでなく、社会起業家としての一面をご紹介したい。
かつて在籍した「国境なき医師団」時代に既に気づいていたのだが、名知さんはミャンマーの無医村で活動を続ける中で医療単独での治療の限界を知ることとなる。 きちんと治療を施しても、患者は一定期間をおいてまた診療所に戻って来ることの繰り返しなのだ。根本原因は食糧不足からくる慢性的栄養不足だと看破した。無力感を感じつつあった名知さんは偶然講演しに訪れた東京農大で有機農法というヒントを得てその実現に動き始める。栄養価あるオーガニック野菜、穀類をたくさん収穫できれば豊富なビタミン類を摂取できる。これは未病の鉄則である。
名知さんはそれまで取り組んで来た医療活動、保健衛生教育活動に「菜園教育活動」を加えた。大きな畑でなくとも庶民が庭先をオーガニックガーデンにし、使用した天然防虫薬の成果もあり収穫の増産が可能となった。
これは地元民の収入増加にもつながるし、ビジネスモデルとしても差別化されている。治療という目先対応でなく未病、健康獲得という根本対策につながるシステムチェンジ ※ の要素も内包している。
この3つの要素からなるサイクルは再現性もあり、これは立派な「ソーシャルビジネス」と言えよう。実際このモデルの実行者の中には、健康を得たばかりか農業収入により家を増築できるようになった者も出てきたそうだ。
本来であればコロナ対応に集中せねばならないこのタイミングで、名知さんはそれどころではない状況のようだった。ミャンマーに残りの人生を預けた名知さんの御安全を心から祈りたい。
※社会課題の根本解決
名知さんの活動 https://mfcg.or.jp/profile/
3.11から10年経ったという。震災当日は東京にいましたがあの時あの日の光景は本当に暗黒というに相応しい状況で今もよく覚えています。また震災から半年ほど経って、被災地の知り合いの案内で立ち入り禁止となっていたエリアを視察させて頂く機会があった。目に入ってきたのは砂漠のような景色、そしてまだ放置されたままの廃車や家屋の断片、大きな倒木といった残骸群だった。
それ以上にショックだったのが地元の方々から聞いた阿鼻叫喚の実話。エンパシーという言葉を週末の社起大セミナーで学んだばかりだが、それを実行し続けることだけは忘れまいと思う。
さあ今日も拳を上げて前進だ!