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【 ROCKY通信 】第312回 ある人気カレー店の閉店

 

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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
 

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【 ROCKY通信 】第312回 ある人気カレー店の閉店

  

 

以前よく通っていた近所の行列カレー店の味をひょっこり思い出し、3年ぶりで雨の中を昼飯に出向いた。アレ?いつも朝から開いてる店なのに、ランチタイムにもかかわらず半分シャッターが降りている。このカレー店は東京の人気店になってしまったが、10 年前のオープン時からしばしば通っていた。スパイシーな味と愛想のよい接客が気に入っていた。しかし超行列店になってからは足が遠のいてしまった。客層は30代のカレーマニアで男性が7割、女性が3割。屈んで店内を覗いてみるとマスターが1人で作業をしている。調理でなく荷物整理をしているようだ。声を掛けてみると、久々にもかかわらず顔を覚えていてくれた。「もう品切れしたの?」と聞くと、「閉店整理をしているんです」との返事。「ずっと行列の人気店だったのにどうしたの?」と聞いてみると「経営的に難しくなったので…」と苦渋の返事。いったん蕎麦屋で昼食をすませ帰宅しようとしたのだが、マスターの寂しそうな後ろ姿がどうにも気になり、店内に入れてもらい会話させてもらった。今日はその話をもとに飲食店経営を解説してみたい。なお、店の名誉のためにも店名は伏せることをご容赦いただきたい。

 

マスターによると閉店理由は2つあったそうだ。まずは原材料費の高騰でやられたという。ここのカレーはスパイスの効いたサラサラ系の本格派なのだが、そのスパイス類の入手が困難になったという。コロナ前との比較でいうと仕入れ価格は4倍近くになったそうだ。世界的なコーヒー豆の争奪戦と同じく、スパイスも新興国の食スタイルの変化に連動しているのではないか。そして第二の理由は人手不足。いくら求人しても人が来ないという。周辺の店舗がどんどん時給を吊り上げたようで、1500円出しても応募は全く無いそうだ。若者は重宝され、楽して稼げるコンビニ等に流れているのだろう。

 

収支構造を見てみよう。客席はカウンターのみで、お客さんは殆どが1人客。なので席の回転率は非常によい。平均客単価は1500円前後で、スタンドカレー店としてはそれなりのプライシングといえる。それでもコスト上昇分を吸収できなかったという。飲食業界にはFL比率という業界用語がある。売上に対する食材原価と人件費の合算比率を指し、30~35%に収まるのが理想とされてきた。マスターの口ぶりからすると彼のFL比率は軽く50%を超えているのではと直感した。内装は居抜き店舗だったので改装費はかかっていなかったはずで、償却費はおそらくゼロ。ロケーションは店前通行量に恵まれた好立地なのだが、物件は古く面積も小さいので、家賃はそれほど経営を圧迫するものでは無かったはずだ。宣伝は口コミだけなので、こちらもコスト要因にはなっていない。以上マーケティングの4Pの視点で考えると理想的なモデルであり、昨今のFLコスト高騰に至るまでは相当な利益が出ていたはずである。

 

以前ある高給取りと思しきコンサル系女性の飲食業を馬鹿にする発言に憤怒したことがあった。「あんなに大変なのに儲からず、やってる人たちは一体何が面白いんだろう」と。あきらかに蔑視している口ぶりだった。「とんでもない!」飲食業は素晴らしいビジネスである。人は美味いものを食べれば身も心も元気になる。そこに気持ちの良い接客が重なれば人を幸福にすることもできる。以前ベーグル屋をやっていた時に、多くの若手社員がそのプロセスを経て人間として大きく成長してくれた。

 

一般市民の賃金がなかなか上がらない中で価格転嫁を繰り返すことは容易ではない。自分も昔価格を上げることが何度かあったが、断腸の思いだった。この景況感だと規模の経済の利かない個人店は特に辛い。クオリティを維持しつつどうにかしてサバイブして欲しい。世が金太郎飴のようなナショナルチェーンばかりになると、食の楽しみが無くなってしまう。それにしてもあのカレーをもう一度食べたかった。残念至極。マスター、捲土重来だ!


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