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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
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絵 年老いた雌狼(引用:毎日新聞)
去年は公私に本当に忙しい1年だった。まるで半年が1年だったような感覚だ。ビジネス起業家だった20年間でも、これほどのスピード感は経験無かった。多くの諸先輩が言われてきたよう、これを老化と呼ぶのだろうか?笑
さてそんな中、忙中閑ありではないが久々に魂に響く絵との出会いがあった。仕事のついでに立ち寄った街の美術館で出会った1枚の絵画だった。作者は黒田征太郎さん、御年86歳。名前こそ存じ上げていたが作品を見るのは初めてだった。イラストレーターとして有名な人だったが、晩年期の現在、画家としての比重を高められ、僕の大好きな街門司港に移住されて今なお創作活動に励まれている。
展示されている絵を順路に従って歩いていて、1枚の絵の前で釘付けとなり動けなくなってしまった。同様の経験は日本人画家に限れば、22歳の時に見た杉山寧氏の「エウロペ」という作品以来だった。血気盛んな若造が1枚の絵を前にして、溢れ出るものを堪えきれなかった。
黒田さんの絵からは優しく穏やかながらも、凛としたビームが出ていた。そして見る者の魂をリファインする清浄無垢なオーラがあった。老いた雌狼は、ただ立ち尽くしてこちらに視線を配っている。もはや毛は少なく、足も細く現役を終えつつある銀狼だ。優しさの中に寂しさ、悲しさ、そして怒りすら感じられる。なのに絵全体としては優しく透明感があるのだ。きっとこの老狼は黒田さん自身ではないか?そんなことをふと思った。ぼーっと、ずーっと眺めていると、こちらも老狼と一瞬同化しそうになるのだが、そんな甘ったれた当方の感情なぞは受け入れない厳しさがある。そして彼女の目から何かを問われている気がする。それがこの絵のメッセージなのだろう。僕は自分の原罪を見透かされている気がした。そしてお前はこれからどうするんだ?とも。
話は変わるが今回、陶芸家黒田泰蔵さんが征太郎さんの実弟と知り驚愕した。僕には20年以上にわたり陶芸作品に狂った時代があったので、現代陶芸作家は把握している。泰蔵さんは好みの作陶家では無かったが、唯一無二な孤高のポジションで常に気になる存在であった。兄に先立ち物故されていたことも知らなかった。一切の甘さを排除したシンプルの極致を白磁で表現された。その作品は独自の白と前例の無いフォルムで空間を支配する。兄、征太郎さんの絵画と通底するのは、暖かみが感じられるにもかかわらず、なぜか反骨や怒りを秘めている点だろうか。お2人とも“PUNKS”だ。作品群から「PUNK精神」を感じる。
黒田征太郎さんは、今も門司港のアトリエで創作され続けている。お顔の表情からも希望を持ってキャンバスに向かわれているのがよく分かる。芸術家というのは引退が無くていいな、いつも自由でいいな、などと下世話なことを思いつつ、自分も生ある限りは何らかの仕事を続けてゆきたいと思う。死に際のVサインを目指して。

黒田征太郎 現在 (引用:RKB毎日放送)