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社会起業大学 学長の林 浩喜（はやし ひろき）です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
SDGｓマップ
初めてSDGsのことを知ったのは2017年頃だっただろうか、肯定的な感情と懐疑的な感情が入り交じり、それは7：3くらいだった気がする。国連が音頭を取り、社会課題を類型的に整理し、しかも2030年までに達成という期限を切っているというのが驚きだった。世界中の多くの国々が未来への危機感を共有し、地球レベルで社会課題を解決しようというスケールに感動した。マッピングやカラーリングでポジティブに表現された例のシートも秀逸だった。ただ、なぜ17項目の中に「もう戦争は起こさない」というのが入っていないんだ？というのが最初の疑問だった。1つ増やして18項目にしたっていいじゃないか、とも。「あらゆる人類の課題中で最悪なのは戦争じゃないか」と疑問を抱いた。16番に平和という表現はあるが、もっとハッキリ言い切って欲しいと思った。あと邪かもしれないが、これらをビジネスに活用する国、企業も出てくるんだろうなと思った。そしてSDGsは環境問題だろうがエネルギー問題だろうが最終的には人間の問題（利害）に帰結するものだと感じたことに少々違和感を覚えた。
横ズレするが、ここのところ熊が里山に下野して人間の作物を食い荒らすだけでなく、人間も襲われるという話題がニュースで報じられている。僕はなんだか合点がいかない。そこにあるのはあくまで人間本意の視点だからだ。彼らだって生き延びるために必死なのだ。人間を襲う理由はよく分からないが、初めて出くわした異生物に本能的に敵意を覚えてしまうのではないだろうか？どの報道でも「害獣」という判断で、駆除すればいいという目先の判断。熊の視点で考えてみる必要もあるのでは無いか？と思ってしまうのだ。そもそも「なぜぼく（熊クン）がそういう行動をとるに至ったのか？」ということも。主語が常に人間、また自分や自国であり続ければ、今後とも戦争も無くならないのではないか、、、
2025年 SDGsランキング
さて、新聞報道によると2030年のゴール達成の目標に対し、先月の14日に国連が中間報告をしたそうだ。現時点での達成率は18％だそうだ。これは定量測定が可能な139のターゲットに関するもので、期限まで5年を残して投げ出してしまいたくなるような結果だ。上位はヨーロッパ諸国が占め、なかでも北欧諸国が強い。因みに日本はランク19位でアジアではトップだがまだまだ道半ばということだろう。特にジェンダー絡みの評価や生物多様性などの評価が低いようだ。
社会課題の解決は多くの場合トレードオフが前提となる。何かの課題を解決できれば、別の問題が生じてしまうという話。それも想定したうえで、モグラ叩きをせねばならない。全体最適の視点だ。いつも笑い話にするのだが、カラスによる被害の深刻な某市が対策に成功したところ、隣町にカラスが増殖し被害が増大したとか。地方の人口減少対策だって、大都会からの移住ならまだしも、そうでなければゼロサムゲームで被害を被る地域だって出てくるはずだ。国と国の関係においても、きっとトレードオフはきっと起こる。
若い世代を中心に、教育とも連動し大きな意識改革をもたらしたSDGs。これは大きかったと思う。今後もフェードすることなく何としても継続・伸長させてゆきたいと思う。一時はジャケットのピンホールにSDGｓのロゴバッジをつけた企業オジサンも跋扈し、ＴＶでは特番やレギュラー番組も組まれ、大いに盛り上がった。しかし本番はこれからだ。アンチな印象の米国（ランキング44位）と中国（49位）が低順位なのは自国の利を最優先するからだろうし、市場原理が全てという立場ならそうなるだろう。それもダイバーシティと言ってしまえばそれまでだ。うまくゆけば国という概念を壊すぐらいの価値ある取り組みなのに残念だ。僕も自分に出来る責務は果たしたい、テーマやスケールの大小に関係なく、「社会起業家」という人財の輩出を通じて。
参考
朝日新聞2025年6月24日朝刊
毎日新聞2025年7月16日朝刊