メールマガジンご購読者の皆様
いつもメールマガジンをお読みいただきありがとうございます。
社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
買い取り専門出張の折り込みチラシ
今週は久々にリベラルアーツともいうべき「法の精神」をS大学教授から学んだ。法の根源、由来からその根底にある思想哲学まで。宗教とも連動しており久々に知的興奮を覚えた。S教授の魅力は溢れる教養に根差した法論で、法を法として語るのでなくその歴史背景から紐解く講義なので決して眠くならない。日本の文化とも連動して語ってくれるので、腹落ち感もある。ライブ授業としては高校時代に大きな影響を受けた倫社のM先生以来の興奮だった気がする。
さて、今日の本題はその対称ともいうべき市中での耳学問。朝、母が30年代モノのテレカをざらっと机上に並べた。テレカ、、、平成の化石だがなぜ今頃こんなものを出してきたのか?なんでも最寄りのスーパーが原価で買い取ってくれるという。そんなものを買い取って一体どうしようというのか?かつてのアイドルの水着写真なら高騰して儲けることもあるだろうが、母が出してきたのは無価値と思われるものばかり。昔の父の職場の広報写真、ラッコやウーパールーパーの写真、果ては父のゴルフのホールインワン記念のイラストまで。テレカが無くなった今、なぜこれを買い取るというのか?母によると朝刊にそのチラシ広告があったという。よく見ると、貴金属やブランドモノの買い取りが視界に入った。好奇心を持った僕は、そのテレカを持って地元のスーパーに足を運んでみた。それは近所のスーパー店頭での買い取り専門会社の催事だった。スーパーによる場貸しだ。
スーパー店頭での催事
35度を超える熱気の中での催事。20代と思しきペアの営業マンが立っていた。テレカはここで買ってもらえるの?と尋ねると、そうだという。小さなテントに導かれる。アンケートに記入し買ってもらえることになったのだが、なぜ今や無価値となったテレカを買い取るのか?その好奇心でやって来たと伝えた。「旦那さん、同業者じゃないですよね?」と念を入れられて答えてくれた。笑
① テレカ買い取りは呼び水で、本命は家庭に眠っている貴金属とのこと
② それ以外にもブランドバッグやブランド時計、ライターに万年筆、カメラから古いおもちゃ人形まで
③ 笑ったのは金歯
④ 買い取ったテレカは、電話代の一部として使える手段として一般企業に販売する
雑談は大いに盛り上がった。「こんな場末のスーパーでちゃんと仕入れになるの?」と聞くと、大きく頷くお兄さん。「僕、インゴット持ち込まれたこともありますよ」と。つい先月ですが、と誇らしげに語ったのはビニール袋にはいった時価300万円の金製品。ふらっと車で立ち寄った若い男性がこれ見て下さいと持ち込んで来たという。祖母の所持だったネックレスや指輪類、母が好みじゃないからと息子である彼にくれたそうだ。困った彼は捨てようと思ったが、念のためとスーパー前の露店店長に持ち込んだ。蓋をあければ、、、なんでも鑑定団!なんと300万の値が付いたとのこと。彼は社会課題の解決という表現はしなかったが。統計では国内の家庭には忘れ去られている貴金属が28兆円も埋蔵されているという。これを換金して所持者に喜ばれ、眠っていた貴金属の価値を再度蘇らせ、自らも儲けるという仕事なんですよ、と。ひょっとすると無用な金鉱資源の開発を抑止する遠因にもなるかもしれない。シニア層に帰属する休眠預金を国のJANPIAが活用しようと取り組んでいるのと根底は変わらない気がする。
場末のスーパーの店頭でのリサイクルビジネス。しばらく観察していると店頭キャッチだけでも次々と商談にいたっているようだった。聞けば銀座に本店があるとのことだ。本店、地域店舗、オンライン店舗等いくつもの商品購入ルートがあるという。しかし今最もシェアが高いのは、このような催事店舗だそうだ。新聞の折り込みチラシをエリアで撒き、出向いた臨時店舗で買い取る。関西以西より九州まで二人で行脚しているという。仕入れが全てのこのビジネスモデルで、地道な末端営業活動が最も奏功しているとは意外だが納得した次第だ。ターゲットがシニア層なのでマーケティング戦略的にも一貫性のあるものだ。
大学での知的学び、市井での刺激的学び、どちらも愉快なものだった。