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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
最終発表会を終えて
先週、周南公立大学の学生達によるビジネスプランコンテストの最終発表会が実施された。これは同大学と西京銀行が共催の起業家養成を目的とした共同研究イベントだ。半年にわたり実施したプログラムの集大成となるビジネスプランの発表会である。今年は2年目で昨年度は「社会起業家コース」だけであったが、今年は「企業課題解決コース」も併設された。内容は地域企業の具体的な困りごとに学生達が解決策を提案するというものである。
社会起業家コースで僕が教えた4名の学生達はみな1年生で、昨年の今頃はまだ高校生だった若者たちである。僕自身の子供と同世代なので、不思議な感覚だった。東京の社会起業大学では大人が途中で音をあげる大変なカリキュラムなのだが、みんな本当によく頑張ってくれたと思う。年明けからは事業計画を仕上げにかかったのだが、まさに茨の道の連続だった。個別指導で徹底的に向き合った甲斐もあり、個性豊かで堂々たる立派なプレゼンテーションだった。前日夜までプレゼン資料をまとめきれず、半ベソ状態だった女生徒が本番力を発揮しグランプリに選ばれたのも印象的だった。会場に来られていた地元企業のトップや幹部の方々からは、「皆レベルが異常に高い」「18とはとても思えない」と真顔で嘆息されていた。きっと生徒達も達成感で満足していることだろう。
実は今回は2名の脱落者もいたのだが、ほぼ全員が途中で一度は辞めようかと迷ったのではと思う。取り組む社会課題が決まらない、ソーシャルミッションがわからないという根幹的なものから、事業コンセプトの方向性が定まらない、市場データが入手できない、競合企業の情報が不足している、サービス価格の決め方が分からない等々皆一様に苦しんだ。市場や競合に関しては、西京銀行の担当者が学生を地域の当該企業に連れて行ってくれ、フィールドワークの手助けをしてくれて有難かった。結局、2月以降は全生徒が事業計画書を書き上げる作業と、プレゼン資料の作成を同時並行で行うこととなった。
生徒に苦悶の表情が浮かぶのを見るたびに「この経験は間違いなく君らの一生の財産になる」「プレゼンを終えた時、きっとこれまでとは違う景色が見えるよ」「就活なんてへっちゃらになるから」と言って励まし続けた。社起大のプログラムは、単にビジネスプランを書くだけでなく、ソーシャルミッションと呼ばれる「社会的な使命」の言語化も求められるので、必然的に自分の生き方や理念の整理も含まれる。人生経験の浅い18歳の学生には厳しい内容だが、最終的には見事にやりきってくれた。そして最後の2週間はオンラインでのプレゼン特訓に集中。何度も繰り返しているうちに改善してゆくのだが、事業計画自体の書き直しが生じたり、プレゼン資料の手直しも毎度のことであった。
昨年度の日本政策金融公庫の発表によると、起業を検討している人の7割近くが社会起業家志望だという。日本ベンチャーキャピタル協会の名誉会長である仮屋薗氏も、社会課題解決型の起業が主流になってきていると言う。特に若い世代でその傾向が顕著だと。「次にどんなビジネスが来るか」「狙い目の成長ビジネスは何か」といった発想ではなく、「自分の解決したい社会課題は何か」が起業の軸となってきており、時代のうねりを感じているとのことだ。
プレゼンを終え解放された生徒たちは実に清々しい笑顔だった。受験の時の何倍もキツいプレッシャーだったと一様に口を揃えた。本当にご苦労様でした。今回の生徒たちが、いつの日か社会起業家となる日がやって来るであろう。そして地域を変え、国を変え、世界すら変えることが出来るかもしれない。今や国は違えども共通の社会課題に面しているからだ。いやいや、過剰な期待をしてはいけないぞ。笑
「社会起業家精神」を持って真っ直ぐに生きてくれたらいい。どのような仕事に就こうとも。
最終発表会スケジュール