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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
イワキメガネ渋谷店
ここ数年目が見えなくてどうしようもない。PCやスマホの文字はもちろん、たまに運転すれば標識が見えない。用途別の眼鏡をいくつか持っているのだが、仕事でもプライベートでもどれも機能しない。ド近眼×老眼×乱視×緑内障。これじゃ並みの眼鏡で対応できるはずないか。ずいぶん以前に大企業のオーナー社長さんから教えてもらい、ずっと気になっていたイワキメガネを師走の渋谷に訪ねた。
数年前にJINSで体験購入した時にそのシステマチックなオペレーション、そして価格に感心したことをロキ通で書いた(第100号)。しかしその後どうにも見えなくなってしまい本当に困っていた。つい苛立って愚痴をこぼすことが多くなり、周囲にも迷惑をかけていた。以前「いい眼鏡屋で作ってもらったら?高いけど全然違うよ」と友人から聞いていた。また前述の社長から「イワキ眼鏡は、過去の詳細履歴も保管してくれて、その時点でのベストな眼鏡を作ってくれるよ。土日でも即時対応してくれるしね」と言われていた。眼鏡を消耗品ととらえるか、大事な矯正器具と捉えるか。デザインにはこだわりがあるので真剣に選ぶのだが、レンズは一番大事にもかかわらず軽視してきた。今回は仕事での支障や歩行中の事故のリスクを実感し始めていることもあり、後者としての目的だけに絞ってレンズを求めることにした。
12月も終わりに近い渋谷のあらゆるストリートは人がすれ違えないほどのごった返し状態。はじめにJINSの渋谷店も覗いてみたのだが、検査待ちのインバウンド客でフロアは溢れかえっていた。その後道玄坂を少し登りイワキメガネに入ったのだが、客はおらず静謐そのもの。職人気質な雰囲気を醸し出す初老の店員さんが現れ、僕が購入意思を伝えると「今日はお時間しっかり取れますか?」と確認された。まさか3時間コースになるとは思わなかったが、、、笑
そして別フロアに移り僕の日常生活での眼鏡の困りごとを丁寧にヒアリングされた。それだけで30分以上。そして検査に突入。全部で5種類の最新設備で検査を進める。ここでは1時間以上。初回だから基本データが必要なんだね、、、納得。そして持ち込んだ3本のフレームの中から今回のレンズに一番相応しいものを選んでもらう。そして次にレンズに対する黒目の位置取りや視線の角度などを何度も微調整。ブルーライトカットや調光カラーレンズ等のオプション決めも同時に。ここでまた1時間。オジさんはどんな質問にも懇切丁寧に答えてくれる。最近どの業界でも減って来た全体像もディテールも知り抜いた本物の“プロ”だ。店内には次々とお客が来始めたが、すべて1対1の対応。JINSの分業スタイルとは異なる。
顧客は富裕層の高齢者、それも品のいい方々が多い。店員との会話から皆さん長年の常連客であることがわかる。僕は完全なる一見にもかかわらず、実に慇懃な接客をして頂いた。これからドイツのメーカーに発注し、僕のカスタマイズレンズは2週間後に空輸で送って来るそうだ。しめて約3時間のレンズ選びと調整、正直グッタリ疲れた。しかし心の満足度はとても高い。この感覚は久しく経験していない。専門性があり、顧客を知る努力をし、ホスピタリティがあり、紳士な立ち居振る舞い。眼鏡を売ろうというよりも、何としても顧客の困りごとを解決してあげたいという意欲の塊。オジさんは60代後半だと思うが、仕事に誇りを持っているのも伝わって来た。価格は予算内には収まったが、これまで眼鏡に支払ったことのないものだった。そうだ予算を最初に伝えたので、そこに収まるようあれこれ努力もしてくれた。静かな店内から1歩外に出ると、もう夜だった。
帰途、眼鏡業界のビジネスについて考えてみた。イワキメガネとJINSとは対極のポジショニングだ。眼鏡業界における勝ちパターンをそれぞれ異なる戦略で体現している。イワキメガネは職人的な専門性(知識、経験)、顧客満足を追求するオトナの接客力を差別化ポイントとして高級眼鏡市場に根差す。シェフが自ら腕を振るう三ツ星レストランに近い業態。客単勝負だ。それに対しJINSは、必要最低限の機能と価格の安さとスピードをKBFとして勝負する。眼鏡業界のマクドナルドだ。店舗ごとの投資もかかるが、素人でも眼鏡を販売できるシステムが出来ている。客数勝負だ。出店戦略も両企業ともきっちりマーケティングされている。店舗リストからわかる。イワキメガネは首都圏の富裕層の居住エリアに近い商業施設や路面店だ。具体的には広尾、六本木、青山、渋谷、二子玉川等。そしてJINSは渋谷店のような旗艦の路面店もあるが、基本的には日本中のショッピングモールに拡散している。
ここ数年で両極のビジネスモデルを体験したわけだが、今後僕はどっちを選ぶだろうか?
答えは「使い分ける」だ。遠近の両方がしっかり見える必要のある今の仕事にはイワキメガネで。普段使いにはJINSを。ただここ最近のひどい弱視化から推測すると、ケガのリスクなんかも高まって来ているので懐が許す限りイワキメガネにシフトしてゆくことになりそうだ。
先週ドイツからレンズが届きましたと連絡を受け、さっそく受け取りに行った。オジさんはレンズをはめ込んだフレームを僕の頭の形状、鼻軸にフィットするように何度も何度も最終調整してくれた。眼鏡が完成した時、本当に嬉しそうだった。そして「このレンズが林様のお気に召して頂けますように。お役に立てますように」と、どこまでも謙虚に話してくれた。イワキメガネのオジサンのお陰で。この購買は僕にとり単なる買い物を超えた気持ちの良いイベントとなった。オジさん、AIなんかに負けないでね!
完成した眼鏡 フレームはEFFECTORの松田優作モデル
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その後2週間ほど使用させてもらっているが、遠近とも実に良く見える。首尾上々!