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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
重病を経験したことはまだないが、総合病院の控室で待たされている時に「あの先生はK大学の医学部を出られているのよ」と敬意をもって語られたり、逆に「あの先生はO大学の医学部らしいんだけど、ちょっと心配ね」、と不安視されているような会話を何度も耳にしてきた。
先週知り合いの医師に、かねてより疑問に思っていた質問をすることが出来た。それは、
① 大学医学部の偏差値と、医師としての優秀さの相関性
② 親が医師であることは、子が優秀な医師になるために有利に働くか
というもの
質問してみて今さらながら思ってしまったんだけど、そもそも優秀な医師の定義って何なんだろう?これはあくまで主観だが、専門分野が何であろうと患者と信頼関係が築ける人。その要素としては、知識、技術(腕)はもちろんのこと患者の気持ちがわかる人。つまり病院の語源でもあるホスピタリティのある人。生前に父が何度か手術入院をしていたので、総合病院ではいろいろな医師を見てきた。そこには実にいろいろな先生がいた。実績(経験値、場数)で有無を言わさず信頼を得ている人もいれば、優しさが前面に出ていてその安心感で信頼を得ている人もいた。それらが全てではないだろうが、信頼感は大方そんなところから来るのではなかろうか。
国公立大学医学部医学科の偏差値
(出典『朝日新聞Thinkキャンパス』https://www.asahi.com/thinkcampus/article-110347)
さて、では医師たちの卒業した大学の偏差値はどう関係して来るのか?偏差値は、思考力や記憶力を測る一つの能力指標であるが、日本では進路とは無関係にほとんどの高校生が少しでも偏差値の高い学校に入ろうとする。何を学びたいか?は二の次だ。募集人員が少ないからか、国内ではあらゆる学部の中で、医学部が最高峰にある。そんな中で冒頭の疑問がずっと自分の中にあったのだ。
友人の医師は一刀両断、即答してくれた。①「林さん、全く関係ありませんよ。研究医(大学病院などで病理の研究をする医師)ならそれもあるかもしれませんが、臨床医(患者と直に接する医師)は無関係ですと。期待していた答えが返ってきたので、嬉しかった。笑
また②についても、「あまり関係ないと思いますよ」と即答(彼は3代続く医師家系)。周囲を見ていて、医者の子は医者になる人が多い。それは親が期待するからなのか、本人が望むのかは分からないが、きっと何かのメリットがあるのだろう。穿った見方をすれば、医者ってやっぱり儲かるの?とか、何のかんの言っても尊敬される職業だからねぇとか。まあ、今や医者に限らず政治家も芸能人も同様の傾向があるのは否めないが、、、
そして彼の結論は、「1にセンス」、「2に場数」というものだった。センスというのは意外な示唆で不思議だった。彼の話では、持って生まれたもので同じ手術をしてもその手法も結果も並みの医師とは異なるらしい。同じプロの医師同士でもセンスの有無は容易にわかるそうだ。それに対し場数というのは納得がゆくものだ。まさに学習効果で、実行するほどに熟達してゆくものだからだ。前者はアーティストに近い感覚、そして後者は職人に近いものではないか。
たまたま勉強が出来たから医者になった、という人には軽傷であっても身を委ねたくない。たとえ最高学府の卒業生であっても。ヒポクラテスの誓いではないが、やはりそれを自分の社会的な使命と信じて治療に専心する医師に託したい。この世界も「ソーシャルミッション」が肝要なのだ。