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社会起業大学 学長の林 浩喜（はやし ひろき）です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
アルベルト・フジモリ 大統領時代（引用：朝日新聞DIGITAL）
人生で邂逅した人物で、最もカリスマオーラを持っていた人って誰だろうとふと考えてみた。本や映像を通じて知った人もあるが、実際に生で見た人会った人の中で。すぐに頭に浮かんだのは、アルベルト・フジモリその人だった。日系の元ペルー大統領。それは1992年夏、僕はまだ商社マンで確かNYからの出張帰りの成田空港でのことだった。デッキ内通路を向うから歩いてくる人に後光というかエネルギーのオーラのようなものが見えた。色は金色だったように感じた。「な、なんだこれは？」、つい立ち止まった。3メートルほどの距離まで詰まった時、「あ、フジモリさんだ！」と直感した。そして“Fujimori-san?”と聞くと、ニッコリと笑顔で“Si”と答えてくれた。そして固い握手。SPすら付いていなかったのも不思議だったが、それもまた格好良かった。たぶんお忍びの帰国だったのだろう。僕が生身の人からあれほどのオーラを感じたのは多分あれが最初で最後であろう。そして同僚や友人に何度もその時の体験を語った。
ちょうどその頃、ほぼ時を同じくして我が国の首相M氏、政界フィクサーと言われていたＫ氏、芸能界の大御所Ｍ氏といった面々と飛行場や新幹線で偶然の出会いやすれ違いの場面があったが、フジモリ氏の放っていたオーラとは比較にならなかった。元々は数学者であり教育者だったそうだが、移民の日系人として学者から政界に打って出て圧倒的な劣勢から大統領の地位まで上り詰めた。成田空港での偶然の出会いはちょうどその頃だったのではなかろうか。
テロ組織MRTAによる日本大使館占拠事件（引用：JIJI.COM）
ペルー経済の回復を成し遂げた報道は聞いていたが、1996年風雲急を告げるニュースが舞い込んだ。左翼テロリストMRTAの14名によるペルーの日本大使館で占拠事件だ。拘束されたのは日本の大使館関係者、日系企業人、ペルーの政府関係者で600名を超えたという。ゲリラは投獄されているテロリストの仲間の釈放や身代金と引き換えに、大使館の人質を引き渡す条件交渉をしかけてきた。日本の首相橋本氏やペルー大使の青木氏が平和解決を望んだこともあり、結果的に4か月も占拠が続いた。しかしフジモリ氏はそんな交渉には応じなかった。徹底抗戦である。そして最後は日本側の弱腰外交を嘲笑うかのように圧倒的パワーでテロを鎮圧した。MRTAによる占拠後、極秘裏に軍を動員し道路向かいの隣接地からトンネルを掘り、大使館の床から突入するという大胆な作戦を立て実行した。そして、、、テロリスト14名全員を射殺。そこには女子供も含まれていたという話も聞いた。また軍の要職者も3名が殉職した。賛否はあろうが、蔓延する国内テロによる国民の危険、不安を一掃すべくトップとして取った決断だ。自身への報復、暗殺リスクを覚悟で。そんな決断ができる政治家が日本にいるだろうか？かつて成田空港で圧倒的なオーラを直に体験していただけに、彼の決断力、実行力には納得がいった。ただし政治家には毀誉褒貶が付きまとうのが常。その後フジモリ氏は後の政権から罪状をかけられ、失脚し、日本への一時的な亡命を経て帰国し、裁判所により25年の禁固の刑に処された。（その後、保釈時期もあった）
アルベルト・フジモリ 近影 （引用：Peoples Dispatch）
昨年、5年ぶりに出所した写真を新聞で見た。86歳の高齢、心臓手術を受け、度重なる裁判や牢獄生活もあって衰弱した印象だった。さすがに成田空港で放出していたあのオーラは失せていた。しかし捲土重来、また大統領選への出馬を検討しているようなことも記事にあった。「すべてのペルー人のためにまた働きたい」と。この人はいつか迎える死までソーシャルミッションを生き切り、無二の「生き様」という遺物を残してこの世を去るのだろう。
