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【 ROCKY通信 】第229回 初めての読書会 為末大「熟達論」

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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
 

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【 ROCKY通信 】第229回 初めての読書会 為末大「熟達論」

 

                      為末大「熟達論」

 

社起大OBの主催するオンライン読書会に参加させてもらった。今回選ばれた本は為末大氏の「熟達論」。大きいテーマとしては主催者H氏のここ最近の取り組み主題である「コーゼ―ションとエフェクチュエ―ション」という大きな流れにおける位置づけのように感じた。最初にタイトルを聞いた時に「熟達」という言葉の響きがいいと思った。成長や練達とも異なり、経験と共に深みを増しつつ熟成されてゆくワインのような人間。

 

本書を読了して思ったのは、この人は「走る哲学者」だったのだということ。5年以上前になるが、恵比寿で経営していた自店舗にもよく来られていたので親しみがあった。アスリートとしてはかなり小柄で、知的で優しそうな雰囲気の人だった。メディアで投資活動や企業経営していると報道されていたのを思い出した。きっと多方面に関心のある方なのだろう。今回初めてググってみると、なんと為末氏は僕の通っていた中学の後輩だった!笑 

 

この本は為末氏の競技人生における自問自答、試行錯誤の経験をベースとしたもの。そして引退後に各界著名人との対話を通じさらに思索を深めた実践色の強い哲学書だ。読んでいてわかるのだが、これまで相当数の哲学書を読まれてきたに違いない。

 

学びとは?熟達とは?そして人間とは?僕が起業や経営の経験から学び得た哲理ともシンクロする内容で、興味深く読ませていただいた。正直で、本質的で骨太。論理的でありながら随所に飛躍もあり、非論理的だったりもする。そこも面白い。いや氏のなかでは論理や非論理といった言葉は最終的にはどうでもよく、最終的にはそれらに縛られない「空」の境地のようなものが説かれている。諦念ではなく積極的な受容。

 

スポーツを題材に、それも本人の競技人生から紡がれているのでとてもわかりやすく面白い。一例を書くと、僕は生徒さん達に「直観を大事にしろ」と常々言っている。論理万能とされる時代への反骨もある。「直観の中にはあなたの経験してきたこと、価値観そして自分ならではの感覚・感性といったものがあり、それらが瞬時にメルトし、大脳を経由せずに捻り出されるものだから」と。「そこにはきっとあなたなりの論理もちゃんと内包されており、少なくともあなたにとりその時点での最適解なはずだ」と。くどくなったが、氏もそれに近いことを書中で述べていた。

 

この読書会は対話型で様々な年齢、性別、バックグランドの人々が参加されており、読後の感想だけでなく、自らの考えを述べる機会でもある。他の人の発言を聞いているだけでも学びとなるものだった。H氏の味のあるファシリテーションで参加者は思い思いに発言できる場だった。今回読書会なるものに初参加だったが、想像していたちょっと気難しい人々の集まりではなく、リベラルな空気感が心地よかった。1人で読書して1人で思索に耽るのも良いが、このような場で意見交換し、時に議論するのは高尚な「遊び」とも感じられた。同じ本を読んでも人それぞれ抽出ポイントも感想も異なり、ダイバーシティも体感した。

  

会を主宰するH氏はとてもユニークな人で、どうやって生計を立てているのか心配になるほどの読書仙人。自説を押し付けることもなく参加者の意見を引き出してくれ、楽しく気持ちの良い読書会だった。

 

NPO法人Talking HP

NPO法人 Talking
社会人や学生を対象にリベラルアーツの研修および読書会を主催しています。

 


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