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【 ROCKY通信 】第212回 “シェイン・マガウアン” 世界が愛する厄介者

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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
 

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【 ROCKY通信 】第212回
“シェイン・マガウアン” 世界が愛する厄介者

THE POGUESのフロントマン“シェイン・マガウアン”

 

今日は前回に引き続き、敬愛するパンクロッカーの話をしたい。少々くどいかもしれないが、お付き合い頂けますよう。今回の主人公は兄貴というよりも大好きな「ダチ」だ。その人の名は“シェイン・マガウアン” THE POGUESのボーカルでフロントマン。アイリッシュ魂を世界に広めるべくマイクを握った男。65歳の短い生涯を去年閉じてしまった。その音楽への取り組み姿勢は本物のPUNKだった。

音楽性は豊穣で、単なるパンクのカテゴリーには収まりきれない。パンクスピリットをベースにしつつアイルランドの民族音楽と融合させたんだ。きっと本人の人生は完全燃焼だったと思う。いや、、、そう言うのは早計だな。死の瞬間に俺の人生は完全燃焼だったと言える人は一体いるのだろうか?これは重要な設問だ。

 

さて初めてTHE POGUESに出会ったのはクラシックカーのフォルクスワーゲンの車中だった。もう20年以上前のことだ。前職時代にベーグルのコマーシャル写真を撮って頂いていたプロ写真家の運転で、どこかに向かう最中だった。彼女がかけたCDだかテープだったか覚えていないが、衝撃だった。「何じゃこりゃあ!」という典型的なROCKYリアクションだった。聞くとアイルランドのパンク系バンドというではないか。

アイルランドといえば、敬愛する兄貴系のヴァン・モリソンを筆頭に、ロリー・ギャラガー、シン・リジイそしてボノ 、シネード・オコナーなど多くの深い楽曲を書くミュージシャンを輩出してきた誇り高き地だ。車中その音に耳を傾けながら、なんという無邪気、純情、楽天、放埓!という興奮があった。

 

2005年のフジロックフェスティバルにて

 

そして数年後の2005年。BAGEL&BAGELが毎年フジロックに出店していたこともあったが、僕が初参加した夏だった。深夜たぶん11時頃だったんじゃないかな。仕切り役のK君から休憩をもらって夜の苗場の森林を彷徨っていた。東京帰ったらE店のカツカレーが食いたいなァなどと思案しつつ遊歩道を歩いていると、中規模の会場に出食わした。

結構な人数が集まっていた。スケジュールを持っていなかったので、近くにいたカップルに次は誰がやんの?と聞いてみた。すると「ポーグスですよ」との返事。久々に聞いたその名前。数年前のワーゲン車中での音が蘇った。迷わずその場にステイし、開演を待った。

 

THE POGUESのメンバーと共に

 

そこに現れたのはヘベレケに泥酔したバンドメンバー達。ボーカルのシェインは完全に出来上がっていた。笑 左手にマイク、右手にウイスキー瓶を片手にグデングデンになって歌ってる。ヘロヘロでロレツすら回っていないという。笑 他のバンドメンバーも、シェインほどではないが皆んなべロベロなのは見りゃあわかる。「いやーコイツらどうしようもねーな~」と初めは思ったが、噂に違わぬ愛すべきキャラにこっちが引き寄せられる。

よく聴くと不思議にメロディーは成立しているし、全体としての楽曲はバランスが取れているのがまた笑えた。シェイン自身も言っている。「マジで歌うよりも酔って歌う方がもっと楽しい」と。貴重な生ライブを観れたのは、今となっては僕の宝物だ。楽曲はあくまでもストレートでシンプル。そして苦しみを歌っても楽観的。歌詞には「Fワード」が何度も連発していたが、それも愛嬌。きっとシェインもストレスフルな日常を歌詞にしていたんだろう。

 

おっと、話を戻そう。シェインも前号で話したジョー兄貴と同じくドキュメンタリー映画が出来たんだ。演出はジョニー・デップ。2020年の作で「シェイン 世界が愛する厄介者のうた」というタイトルだ。今週末、それを観た。最高のロックドキュメンタリーだった。意外だったのは悪童シェインが家族愛に包まれた環境で育ったこと。親父さんもお袋さんもかなり個性的な人だったが、シェインへの溢れんばかりの愛情は伝わってきた。

そして妹。兄の演じた破天荒と純情を深く理解し、献身的に兄さんの精神面のサポートをしていた。ジョー兄貴が長年失意のどん底状態にあった時に、ポーグスのワールドツアーに引っ張り出したシェインの深い優しさは、きっとそんなところから来たのだろう。ちなみにジョーと同じく、シェインはロンドンの名門パブリックスクールに通い、そして退学となった。

 

映画「シェイン 世界が愛する厄介者のうた」

 

予告編 https://longride.jp/shane/

 

破滅型ロッカーは辛い。パンクスであればなおさらだ。ジョー兄貴もそうだったが、ファンが期待する自分を演じ続けざるを得なくなる。裏切ることは出来ない。誠実であればなおそうだし、またビジネス面からもそうだ。売れるまでは勢いでどうにかなるのだが、名を成した後もそれを持続するのは困難だ。そして素の自分とのGAPに苦しむことになり、現実逃避のために薬物やアルコールに依存することになる。しかし無責任なファンは何の罪悪感もなくそれを求め続ける。

シェインもそれに応じた。本作は俳優のジョニーデップが演出した作品だが、ジョニデがいかにシェインを尊敬しているか、作中を通じて痛いほど感じられた。きっと彼も同じ悩みに苦しんで来たこともあるのだろう。

 

最晩年、映画の終盤でインタビュアーに「残りの人生で何をしたい?」と聞かれ、「もっと良い曲を書きたいんだ。きっと書けると思う」と酔眼ながらに答えていたのが心に響いた。冒頭の設問にもつながる話だが、いつか自分が三途の河を渡る時も、きっと同じような感慨に浸るのだろうと思ったからだ。

 

最後にシェインの珠玉の名曲 “Fairy tale of New York”を君に贈りたい。シェインには珍しくメランコリックなバラード調の作品だ。

 

“Fairy tale of New York”


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