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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
1月は広島の福山市から市内5大学の学生さんへの起業教育のご依頼をいただき、3週連続で実施した。起業教育といっても、社会起業家精神の醸成をベースとした内容を実施したものだ。そこにキャリア視点も入れて欲しいという市のニーズもあり、それに応えるプログラムを用意した。学生さんには「人生で大切にしたいこと」、そして「何を成し遂げたいか?」を自問しつつ最終的にソーシャルミッションを見つけよう!というもの。
参加者は1年生から4年生までの地元愛溢れる若者達であった。そして2回の約半日プログラムを経て、土曜日の最終発表だったのだが、全員が見事にやってくれた。なぜその年でそこまで語れるの!?という驚きと喜びの気持ちで一杯になった。1年生などはまだ18歳だというのに。彼らは未来志向であり、純粋であり、そして利他心を持っていた。
福山の息子娘たちよ、よく頑張った!笑
初日は社会起業家について説明し、起業家との対比をしながら学んで頂き、同時にソーシャルミッションについて理解をしてもらった。そして即興に近い形でソーシャルミッションを作成して頂いた。2日目は、地元福山の社会起業家である岡田臣司さんにご登場頂き、運営されている「せとうち母家」の現場をフィールドワークさせて頂いた。
岡田さんは福山市郊外の里山でソーシャルビジネスを展開されている。里山における耕作放棄地の引き受け、空き家古民家対策、害獣対策等の現場などを視察して回った。雨が降る中を実際に山入りした。そこで岡田さんは野人と化し(笑)、学生もさっきまでとは違った生き生きした表情になったのが印象的だった。
座学で得たアタマの知識が自然との交わりで五感を通じてフィルタリングされ、各人において地肉化されて行くのを感じた。里山育ちの学生は、喜々としてイノシシ捕獲網にトライし、芸術肌の学生は古民家再生やそれを使った活動に興味を示し、食文化の好きな子は養蜂を用いたビジネスに思いを巡らせていた。やはり教育には座学だけでなく、体験実習との両輪が大切だということを改めて再認識した。またフィールドワーク後の分かち合いの時間はとても深い内容の対話となり、つい聞き入ってしまった。
※ロキ通で以前書いた岡田さんの回のリンク
【 ROCKY通信 】第173回 「せとうち母家」 究極の里山リゾート
最終発表会では、全学生が3週間の思考&試行錯誤しつつ捻り出したソーシャルミッションを発表した。社会課題の捉え方が「自分ごと」になっているのにまず驚かされた。素晴らしいセンスを持っている。約半分の参加者が郷土福山の問題解決に挑むもの、残りが人的な社会課題に挑むものであった。
そして自己の強み、価値観、動機も自分らしさという形で言語化した。こちらの方はいささか苦労したようだが、グループ対話の中からもヒントを掴んでいたようだ。それらを結合させたのが「ソーシャルミッション」だが、借り物で語った学生は1人もいなかった。東京で主催している社起大でも、並居る大人達が苦悶する内容なのだが...
また内容ばかりか、その堂々たるプレゼンテーション姿勢にも驚きを禁じ得なかった。18歳の子がなぜ?社会人経験もない子がなぜ?人生経験のまだ浅い子がなぜ?しかもまだ教えていないのに、ソーシャルミッションを実現するビジネスまで足を踏み込んでいる子達もいた。
今回、僕の中で1つの答えが出た。いわゆる起業家教育とは異なり、社会起業家精神の教育は早期から取り組む意味があると。ビジネスの事業化は高校大学を卒業した後の経験で身につけてゆける。しかし最も大事なソーシャルミッションは、年がいったから経験を積んだからといって発見出来るものでもないというもの。逆に社会人経験を積むほど価値観は複雑化し、余計に見えにくくなるという気がする。それは当人の原初的な価値観、もっというとDNA的なレベルで若き日において既に内在している気がする。
よってなるべく早いうちから、少なくとも高校卒業までにソーシャルミッション教育を実施する意味があるし、そうするべきだと思うに至った。それが子供達の将来の大事な背骨になってゆくのだから。生きてゆく上での軸となるのだから。
プログラムに積極的にコミットして下さった福山市職員の皆様には心から感謝したい。皆様の本気の取り組み姿勢が学生達の「ヤル気スイッチ」に着火させたのは間違いない。