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【 ROCKY通信 】第188回 コモディティ化という決断 クロムハーツ

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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
 

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【 ROCKY通信 】第188回 コモディティ化という決断 クロムハーツ

クロムハーツのコマーシャルアド@バス停

 

市場が飽和してくると消費は滞り、既存商品やサービスには飽きが来る。するとかつて栄光を誇ったブランドがコモディティ化をし始める。先日バス待ちしていた時に、電子広告板に個性的な若い子たちがカラフルに映し出されていた。一体何のアドかと思って見るとあの伝説のシルバーブランド、クロムハーツではないか。

クロムといえば、ハードロック、ハーレーバイカーといったちょっとマッチョ系オヤジのコアなファンがベースだった大人の男性ブランドだ。創業者でありオーナーのリチャード・スタークが伝説のアイコンでありブランドストーリーも彼そのものなのだが、日本ではその独自の世界観に憧れて20代の男子も背伸び購入していた。

そういえば前職で若手の社員の何人かから相談されたことが何度かあったっけ。「社長、どうしてもクロムのリングが欲しいんですが、30万もするんですよ。買うべきか迷ってるんですけど、どう思いますか?」みたいな内容だったと思う。当時彼らの手取りはそれよりも少なかった。僕は「買ってみなよ、買えば本当にその価値があるかわかるから」とアドバイスした。

 

クロムハーツ愛好者 イギーポップ 御年76歳

 

シルバーを使った、無骨で硬派、そして聖と悪を併せ持つ世紀末的なデザインはイギーポップやスラッシュといったロックスターも魅了し、メンズシルバーという新たなカテゴリーを生み出したといってもいい。日本で最初にその価値を認めたのはコムデギャルソンの川久保玲氏だったと後に聞いて、さすが川久保さんだと得心したものだ。

さて、そんなクロムハーツが、此の期に及んでなぜ若者に?なぜ女の子に?

その違和感からバス停の電子アドに見入ってしまった。読み取れたのは、アンゾフの成長マトリクスではないが、新規顧客の開拓。尖った個性を求める若者、クロムに憧れているけどまだ手にしたことのない若者を取り込もうという意図だ。うーん、危険だなと最初は思った。コモディティになっちゃいけないブランドだからだ。

 

トゥルーレリジョンのコマーシャルアド

 

近しい事例でいうと、トゥルーレリジョンというデニムブランドの失敗だ。20年前、プレミアムジーンズの頂点に君臨していた。独特のフォルムとオリジナルのステッチワークにラフな要素も手伝ってハリウッドスターが愛用した。日本でも知る人ぞ知るブランドとしてオシャレ人の間で大ヒットした。当時は新宿伊勢丹でしか入手出来なかった。

それが、、、1枚5万近くしたパンツが、徐々にこだわりが薄れてゆき10年後には半値でも売られるようになり、一気にコモディティとなってしまった。7年くらい前にNY店を覗いて落胆した。GAPと見間違えてしまうほど大衆化していたからだ。コアなファンは、一般化して誰もが所持するようになると引くものだ。因みに僕は今も破れて穴の開いてしまった20年モノを好んで履いているけれど。

 

ドクターマーチンのコマーシャルアド

 

反対にコモディティ化が例外的に成功したのは、ブーツのドクターマーチンだ。この英国のブランドは元来はワークブーツメーカーだったのだが、70年代にパンクロッカーが好んで履いたことから、年代を問わずパンク愛好者から熱狂的な支持を受けていた。その反逆の精神は伝説の英国ロッカーたちにも愛された。僕が敬愛してやまないピート・タウンゼント、ジョーストラマー、シド・ビシャスなどなど。モッズやスカの連中も愛用していた。

フレッドペリーのポロにスキニーデニム。細身のサスペンダーでそれを吊って脚元にはドクターマーチンの茶のブーツ。いや格好良かったな〜 僕の高校時代の憧れのファッションでもあった。

それが今やコモディティ化して、世界中のティーンエイジャーたちが履いている。それも男女を問わず。黄色いステッチが入っているから見ればすぐにわかる。元来尖ったコンセプトなのだが、実はベーシックでよく見ると可愛いデザインがパンクに無縁の日本の若者たちのハートも捉えた。ブランドの反骨スピリットまで汲み取れているのかは分からないが、値段も1万円代からなので手が届きやすいのもあるだろう。

ドクターマーチンはコモディティ化することで大成功した例外的なブランドだ。それもブランドイメージを損なうことなく。街中で若者が履きこなしているのを見ると、こっちまで元気をもらった気分になるから不思議だ。それがこのブランドの力なのだろう。

おっとまた話が逸れてしまった。クロムハーツ、大丈夫だろうか?

コモディティ化したクロムは一ファンとして見たくない。ビジネスとして新規顧客の開拓が必要なのはわかるが、憧れのブランドがオンリーワンのポジションを失った時、コアなファンは離脱することになる。新規顧客獲得のために大衆化路線に向かい、結果的に地盤沈下を招いたブランドは枚挙に遑がない。クロムハーツの命運を継続ウオッチしてゆきたい。

 

創業者リチャード・スターク


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