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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
大学生を連れて、瀬戸内の離島にフィールドワークに出かけてきた。1ヶ月後の移動販売車での販売実践に備えて、事前視察が目的だ。船に乗ると心地よい風がシャワーのように肢体を通り抜けてゆく。空は青く、海もそれに負けないくらいに青く、クリアーだ。きっと学生たちはこの非日常にワクワクしたことだろう。上陸すると、市の職員の方がお迎えにきてくださり、早速公民館のようなところに案内してくれた。そこには集落を代表してくれたおばあさんたちが待っていて下さった。双方の自己紹介を終え、早速ヒアリングに入っていった。
そこで聞かされた話は、学生は勿論のこと僕も衝撃を受けた内容だった。そのいくつかをあげてみる。
・現在約140世帯190人が暮らしているが減少には歯止めがかからない
・家屋の多くが空き家
・住民の大半が年金生活の独居老人
・診療所はあるが初期診断のみで、治療は本土の病院通い
・乳幼児は島内で3人であり、宝もののように大切にされている
・四方を海に囲まれているのに、気候変動で全く魚が獲れなくなってしまった
・島内にはスーパーもコンビニも無い、そして警察もいない
・移動販売車は毎週来てくれるが、必要なものはわざわざ本土に買い物に
・集落でも、全く人に出会わないことが常態的になっている
・かつては祭りがあり、島民同士の大きな交流の場もあったが今はない
学生たちは真剣な面持ちで傾聴しつつメモを取る。そして質問を開始した。シリアスな現状を知り、彼ら彼女らの質問はどうやったらこのおばあさん達の「不」の解消に役立てるか?どうやったら笑顔になっていただけるか?をベースにしたもので、時とともに場の空気はポジティブなものとなった。学生の気持ちが通じたからだろうか、おばあさん達は心を開いて下さり、どんどん本音を語ってくれ、いつの間にか熱い場へと転じていった。
インタビューを終え、1ヶ月後の学生による移動販売に備え島内を視察して回ったが、本当に空き家が多いことを実感し、暑さの影響もあったのだろうが人影もほとんど見ることは出来なかった。思いのほか厳しい路地の坂が多く、試しに皆で歩いてみたが上りは息が上がりそうになった。そして下りは膝が笑ってしまった。多くの社会課題を象徴するこの島に、日本の離島や中山間地区の縮図を見た気がした。当事者にはなれなくとも、共事者になるべく今回のプログラムを通じて学生達と共に考え、行動したい。
印象に残ったのが、島内に棲む多くのノラ猫だ。とても人馴れしていて近寄っても逃げない。島民と共存しているのがよくわかる。かつての部下に教えてもらったことがある。「ノラ猫が逃げない地域は、人が優しいところです」、と。本当にそうだと思った。