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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
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近所のコンビニやラーメン店でよく話をしていたミャンマーの若者達を最近見かけなくなった。皆さん一様に温厚で親切心を持った子が多く、よく国情についてやりとりしていたが一体何が起きたのだろうか?
ミャンマーのジャンヌ・ダルクであったアウンサンスーチー氏による民主化の道が軍によるクーデターで閉ざされて約2年。国民は一体その後どうなっているのだろうか?まだ旅をしたことのない国だが、日本との歴史上の縁や現地に残留する社起大OBの医師名知仁子さんの心配もあり、とても気になっている。ウクライナ侵攻問題が起きてから、各メディアのニュースにも取り上げられなくなってしまった。
ウェブや地元情報によると、一般的階級層の国民は困窮しているそうだ。首都ヤンゴンですら食費や家賃もままならない困窮者が増え、1日当たり100円以下で生きる貧困層が15年前の約50%近くまで増加しているそうだ。かつてはフィリピンと共にアジアにおける最後のフロンティアと呼ばれていたのが嘘のようだ。
かなり古い話にはなるが、留学していたコーネル大学のファイナンスの著名教授が、これから投資先として有望なのはアジアならミャンマーとインドネシア、南米ならブラジルとチリだと言っていたのを思い出す。国内総生産を見ても、2021年までのデータではあるが、同国は政変後に20%急落している。周辺国のカンボジアやラオスは漸増しているにも関わらず。
国際情勢的には欧米が引きモード、日韓は静観、ロシア中国は積極支援という構図だ。独裁国家とも言えるロ中は自陣拡大の為の関係強化のチャンスと見ているようだ。政治文脈に経済活動が連動する形だ。ミャンマーも日本と同じく労働力の首都圏一極集中で国内の農村漁村から労働者が集まる構図だが、生活が出来ずに帰郷する者も増加しているそうだ。その方が出費も少なく生活はマシになるだろうが、軍による統制は都市部となんら変わらない様子だから困る。
また一方で、国外に経済チャンスを求めてまた安全を求めて同国の外務省には日々数百人が列を成すという。それなのになぜ僕の生活圏からミャンマー人たちが消えてしまったのか謎のままだ。きっと祖国のために帰国したのだと思うけれど。
若者を中心に国軍に対抗する形で「国民統一政府」というバーチャル政府を樹立し、「国民防衛隊」なる自警団を組織した。国軍との激しい対立は想像しただけでも緊迫感が伝わり、リアルに血の臭いがして来る。そして実際にそのような情勢のようだ。
考えてみれば人類の歴史自体が覇権を争う闘争の歴史であり、何度苦渋の経験をしても、そこから人間が学ぶことは出来ないと結論付けられる気がしてくる。世界史年表も繰り返されるのか。覇権とは時の権力者が自らの意思で他者をコントロールできる世界の実現。それが人間の本性であり、原罪なのだ。意味なきカオスや混乱を回避するにはそういう局面が奏功することもあるだろう。
しかしせっかくSDGsのような公共概念が国際認識として定着しつつあるのに、暴力の前では全てが無力だ。そして暴力を押さえ込むためには更なる暴力を必要とする。人類は進歩はするが進化はしないのではないか。開き直ってしまえば、それが人間という生物なのだ。
人間がその原罪に抗うには一体どうしたら良いのだろう?それを受け入れた上で、少しずつ時間をかけて進化の過程を辿ってゆく他ない。理想とするビジョンを共有し、その実現に向けて都度民主的に議論し、諦めずにステップバイステップで前進するより他は無いと思う。
ガンジーやジョン・レノンは天国でどう思っているだろうか?