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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
20世紀も最後の頃、僕は起業した。大企業での職務も経験し、アメリカのビジネススクールにも行き、三十路に入ったばかりの僕は経営を分かった気になっていた。そしてある意味、自信満々で起業した。今にして思えば恥ずかしい限りだ。事業を開始して、1年も経たないうちに自分は経営の何も分かっていないことに気がついた。
ちょうどその頃、稲盛さんの主催する盛和塾は中小企業経営者が学ぶ道場として隆盛を極めていた。知り合いのベンチャー経営者もたくさん通っていたし、誘いも受けた。そこから著名な若手経営者も多く育っていたが、なぜか僕は行く気にならなかった。多分、俺はビジネススクールまで行って学んで来たのに、今さら経営勉強会に行ってどうするんだという勘違いがあったのだろうと思う。
起業して2年くらい経った頃だろうか、資本と経営に関することで、会社をどう運営してゆくかで深く悩んだ時期があった。ハウツーで解決できる話でなくもっと本質的なところで。どこにも解もなく、誰にも聞けない状況で少し自信を無くしかけていたと思う。座学の経営と、実際の経営は必ずしも一致しないことを悟った。その時、たまたま本屋で「成功への情熱」という本を手にした。読後、衝撃が走り心底からの元気をもらった。
そこにはこうあった。
詳細は覚えていないが、そこに書いてあったのは、人生の成功も仕事の成功も全ては「考え方」次第だということ。まず成功の必須要素として、殆どの人が「能力」が全てだと思い込んでいる。偏差値の高い学校を出ているとか、難関資格を持っているとか、入社するのが困難な会社で働いているとか、、、多くの人々はここで人生を諦める。
ところが、稲盛さんは「熱意」だって結果につながる大事な要素だと言う。さらに「考え方」と言う要素も最終的な大事なポイントであると。能力、熱意は0から100、しかし考え方はマイナス100からプラス100で評定せよと。「運」というパラメーターが式に入っていないのが稲盛さんらしい。
例で説明すると、
A君 能力70(最難関大学を卒業)
B君 能力30(3流大学を卒業)
通常はここで人生の勝負あったと判断する。だから親も必死で能力を証明できるレールに子供を乗せようと血道をあげる。
ところが、
A君 能力70(最難関大学を卒業)、熱意30
B君 能力30(3流大学を卒業)、熱意80
となればどうだろう?A君は大学合格を果たした時点で人生の勝者になったものと勘違いし、その後の努力を怠ってしまった。逆にB君はそこから誰にも負けない努力をし続けた。
その結果、A君の積値は2100でありB君は2400となり逆転が起きる。
最後に考え方。これはポジティブorネガティブということだと思うが、この正負で人生の結果はさらにドラマチックに変わる。A君は自分さえ良ければいいという利己心のみで生きたとしよう、マイナス70。他方B君は他者のために自分の能力も熱意も捧げて貢献しようと決意し実行し、プラス70としよう。最終結果はA君−147,000、B君+168,000。極端な例ではあるが、まとめてみると
・人生(仕事)の成否は、能力だけで決まるわけじゃない
・熱意という本気の努力、周囲を巻き込む熱量も大きな要素
・考え方という生き方の姿勢次第で、能力×熱意の積算値が大逆転にいたることもある
(足し算でなく掛け算にしてある妙味がそこにある)
僕は読後、衝撃を受けると同時に自分にも大いに結果を残せるチャンスがあると奮起し喝が入った。その後、事あるごとに社員にこの話を口伝した。そして事業は大きく成長した。
稲盛さんは先月末にお亡くなりになったが、このタイミングで30年ぶりにこの方程式のことを想起させていただいて感謝している。改めて”For Others”の姿勢も再認識した。この方程式は、誰にとっても死ぬまで有用なものだ。僕の場合、「能力」は知れているので、「熱意」という努力と「考え方」という生きる姿勢を大事にしたい。与えられたものを正しく使い切って来世に向かいたいものだ。いやいや、「能力」もまだまだ諦めてはいけない!笑