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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
先日、勤め人時代にお世話になった住友商事から「アラムナイ(OB)インタビュー」という企画に有り難くもお声掛けいただき、立派な新社屋やコワーキングスペースを見せて頂きつつお話をさせてもらった。大学を卒業して約6年間働いた最初の職場だ。どのような社員だったか、どんな仕事をしていたか、起業するに至った背景等の質問に答えているうちに心は35年前にタイムスリップした。色々な出来事の記憶を辿りつつ話していたのだが、一つ気づいたのは「独身寮」での人間関係が20代の自分に影響を与えていたということ。そのあたりの回顧録を書いてみたい。
今や「独身寮」という言葉は死語になりつつあるという。文字通り企業で働く独身者による共同生活の場だ。Z世代は完全プライバシーを求めるため、今や独身寮は全くの不人気で多くの大企業が手放してきたそうだ。僕もどちらかというと個人行動が好きだったので、当時は安上がりなのと便の良い立地以外にはあまりメリットを感じていなかった気がする。しかし、すっかり忘れてしまっていたそこでの日々がフラッシュバックし、珍しくメランコリックになってしまった。
入寮すると、新人歓迎コンパが盛大に行われる。1人1芸が必須なのだが、これを通じて同期との結束が固まり、先輩たちとの交流が始まる。最初に入った寮の新歓では、今やったら大変なことになるであろう「慣例行事」も普通に行われていた。全裸にされ20センチ四方の銀紙だけ渡され、近くのセブンイレブンまで行って顔面コピーを取ってくるというものだ。笑 そしてGW前には夜中に本社を出発して5時間かけて寮に歩いて(走って)帰るというイベントも。秋には寮祭があって、社内外の女子が大挙して遊びに来るという楽しい企画もあった。大浴場や大食堂での日常的会話には、仕事や個人的な相談事も多くあった。商社は部門が異なると別の会社のような組織体系なので、会社だけの人付き合いだと社内の知己は限定的になる。独身寮の人間関係はそれを補うもので、若年層(30歳以下中心)の社内人脈のようなものが形成された。年長者は公私にわたるメンターの役割も果たしていた。仲良くなった先輩の部屋によく遊びに行って長話をしていた。僕は起業の夢を語ることが多かったが、中には起業志望の人も数名いて、週末には深夜まで語り合った。
駐在で海外赴任したり、赴任先から帰ってきたり、はたまた結婚で退寮したりと出入りは多かったが、やはり独身寮の人間関係は今思えば貴重なものだった。当時の人々との付き合いはもう殆ど無いが、個性的で優しい人が多く、当時交流していた人々の顔や名前を思い出すと心温まる思いがする。
仲良くなった外国人寮生からは、その発想や生き方において大きな影響を受けた。また当時MBA留学ブームで、企業派遣で留学から戻ってきた先輩方や、ビジネススクール経由のインターンで一時的に寮に居た外国人学生などから資本主義最前線の色々な話を聞いて熱くなったのを覚えている。特にチャレンジングな生き方を志向する米国人寮生の話が響いた。当時はNYの不動産王だったドナルド・トランプにも憧れた。笑 結局それから2年後、起業資金に予定していた貯金を全て米国留学に注ぎ込む決意をし、会社を退職することとなった。
人生とは不思議なものである。もし「独身寮」に入っていなかったら、ひょっとするとまた違う人生になっていたかもしれない。お世話になった住友商事にはあらためて感謝している。世代論はナンセンスかもしれないが、Z世代の皆さん、ドライな人間関係が主流になってしまった昨今、濃い付き合いの独身寮もなかなかいいものですよ!