【ROCKY通信 】第111回 2022東大入学式辞「社会起業家のすすめ」 | 【公式】社会起業家を育成するソーシャルビジネススクール 社会起業大学

セミナー

個別相談

資料ダウンロード

メールマガジン

講座案内

セミナー

個別
相談

資料
ダウンロード

メール
マガジン

講座
案内
NEWS & BLOGS 一覧へ戻る

ロッキー林のイロジカルシンキング へ戻る

【ROCKY通信 】第111回 2022東大入学式辞「社会起業家のすすめ」

メールマガジンご購読者の皆様
 

いつもメールマガジンをお読みいただきありがとうございます。

社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
 

このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
 
 

【 ROCKY通信 】第111回
2022東大入学式辞「社会起業家のすすめ」

東大31代目総長 藤井輝夫氏

 

先週行われた東大の入学式の記事が新聞に掲載されていた。東大が大きく新たな進路に舵を切ろうとしているのを感じさせられた。元来は官僚を輩出することを目的とした東大が、また国内アカデミズムの頂点として存在する東大の総長が、ビジネス領域の、それも国内では本流とは言えなかった「起業」と言う言葉をキーメッセージとして新入生に訴えかけたからだ。文化系から理科系の全学部の新入生に対して。つまり起業を学祭的に捉えての発言だ。記事を読むと「社会起業」「社会起業家」と言う単語こそ使われていなかったが、その内容は営利追求の従来型の起業ではなく、「社会課題の解決に向けた社会起業家を輩出してゆきたい」という意思表明と理解した。それも8年後までに700にするという具体目標を掲げて。社会起業家を育成する国内最古の教育機関のオペレーターとして、大いに共感した。 

 

世界大学ランキング2022

 

記事を読んで最初に感じたのは、東大は相当なる危機感を持っているのではなかろうかというもの。国内でこそ最高学府としての地位は不動だが、海外メディアが発表する世界大学ランキングでは常に30位以下となっている。英米の大学だけでなく、アジアの大学の後塵も拝している。最初はそれほど気にしていなかったのだろうが、プロ野球でトップクラスの選手が米国メジャーに出てゆくように、学問の世界でもより自由で経済環境の整った海外に流出する傾向が加速しているという。実際、有名進学校の生徒の中には東大の合格を捨てて海外の大学に進学することを希望する生徒も増えていると聞く。国家レベルで考えても、産学協同、産官学といった言葉は日本でも日常的になっているが、現実において欧米のそれと比べた時のスピード感や予算感は桁違いだという。成果において今後大きく劣後することも想定され、その差がさらに国家格差につながってゆくという危機感もあるに違いない。

福沢諭吉 渋沢栄一

 

次に共感したのは頭脳の象徴としての東大が、人の心の重要性をこのような公の場で言及したことだ。「ケア(他者への顧慮)」という言葉をその中心に据えての発言だ。そしてそれを単なる倫理道徳の話としてではなく、起業論にも結びつけていた。他者への関心、配慮がビジネスシーズの原点であり、その追求のプロセスが自分自身の新たなる可能性、才能の発見に繋がるというもの。福沢諭吉や渋沢栄一を例示しながら、自己利益の追求に終始するのでなく、公共性や社会性にも積極的に関わってゆくべきであると。まさに社会起業家!だ。これは社起大の基本思想の「自分の才能を生かして、誰かの役に立つ」のフレーズとも通底しており、社起大のミッション、ビジョンの再確認にもなった。

 

欧米人と異なり宗教的背景のあまり無い日本人にケアの心を育むには、初等教育における道徳の見直しから入る必要があると思われる。先生が、そして何より家庭内における親の価値観がそうならなければ、単なる観念論で終わってしまうからだ。子供にとり身近な大人のあり方、行動こそが問題なのだ。社会の価値観というOSを入れ替えるということは、とても時間がかかる作業だ。しかし東大という国内で最も影響力のある教育機関がその発信をしただけでも今回の意味は大きかったと思う。幸い今春の新入生も属するZ世代と言われる人々は、周囲の価値観に流されることがなく自己本位で何が正しいのか、何が自分にとって本当に大切なのかを思慮している人が多いと言う。応援しなければならないと思う。

 

総長の藤井輝夫さんは、僕と同じ年の58歳と知って少々驚いた。東大の総長というと既に何かの学門分野で名を成した偉いお爺さんという先入観があったからだ。そういう人選をしたということ自体が東大変革への決意表明ということなのだろう。最高学府から起業家、それも社会起業家が生まれる流れができれば、他の教育機関、そして企業、行政も含め国全体にも伝播する。そして起業という選択肢が「より一般的なもの」となる。その流れこそ日本変革の原動力となるかもしれない。なぜなら起業とはビジネス側面だけではなく、思想、哲学、芸術、科学といったあらゆる要素を包含する生き方とも言えるからだ。社起大もその一助となるべく共に前進したい。

 

東大入学式辞の文章と動画はこちら

令和4年度東京大学学部入学式 総長式辞 | 東京大学

 

ps

年前に高名なベンチャーキャピタリストから聞いた話を思い出した。今後の投資対象となる起業は、社会課題解決の要素が入ったものが本流になるであろうと。そしてビジネスアントレプレナーとソーシャルアントレプレナーの垣根はいずれなくなるであろうと。「社会起業家」という言葉を使わなかった今回の式辞。ひょっとすると東大もそのように考えているのかもしれない。


メールマガジン登録(無料)はこちら


    【オンライン開催・参加無料】
    未経験からでも目指せる
    自分の才能を生かして誰かの役に立つ起業家へ
    社会起業家入門セミナー