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【 ROCKY通信 】第67回 ソーシャルビジネス都市 “ボローニャ”

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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
 

このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
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【 ROCKY通信 】第67回ソーシャルビジネス都市 “ボローニャ”

赤い街と呼ばれるイタリア・ボローニャ

 
前回に続き井上ひさしゆかりのお話を。
イタリアの古都ボローニャは、観光客にはグルメとオペラ、回廊に斜塔の街。世界最古の総合大学ボローニャ大学(ダンテ、ガリレオ、コペルニクスも卒業生)を擁し、自治都市としてのモデルでありかつてはイタリア共産主義の牙城でもあった。大好きだった映画監督のパゾリーニがボローニャ出身のボローニャ大学卒というので覚えた都市名だ。
さてさてそんなボローニャに井上ひさしは魅せられてしまい30年間も恋し続ける事となった。井上ひさしがボローニャに惹かれた理由は、ボローニャの街自体つまり市民が伝統的に持つ「自主独立の精神」、「共生の精神」、そして「寛容の精神」だった。歴史的に組合活動が発達しており、それがベースとなって社会的弱者に対する福祉活動も当たり前のように市民ベースで行われ、行政もそれを支援しているという。 
 

ボローニャの回廊を散策する井上ひさし

 
これは10年近く前にNHKのドキュメンタリーで見たのだが、ある中年男性が主催する劇団の話。
彼はボローニャ大学卒でありながら元ジャンキー(麻薬中毒者)で、ホームレス同然の生活をしていた。そこで彼自身が立ち上がり、街の人口の数パーセントを占めるホームレスが社会復帰する自立支援のために彼らに舞台演劇をさせるという活動をしていた。彼が脚本を書き、ホームレスの人々に演技指導し役者として舞台に立ってもらうのだ。
演劇を通じて彼らと社会とを繋げ舞台表現に取り組むことで自己肯定感や自信を取り戻すという。きっと演劇という仮想社会の中で自分の役割を果たし、チームワークし、観客から評価されるという一連のプロセスが有効なのだろう。その活動を地域コミュニティはもちろん自治体や大学も一体となって支えるという内容だった。
 

『ボローニャ紀行』 井上ひさし著 文春文庫

 
また、ゲイ組合による社会困窮者を助けるためのファッションショーとオークションを掛け合わせた内容のイベントも行われていた。販売するのは古着をリフォームしたもので、モデルには地元の名士や有力者が選ばれ素人ながらもその気になってユーモラスにステージ上を練り歩く。会場はやいのやいのの喝采で大盛り上がりであった。
イベントはゲイ組合の人々が取り仕切り、行政は無料で場所貸しする形で支援し、メディアは広報としてもその活動を後押しする。市民はイベントに参加しショーとオークションを楽しみながら買い物し、それが寄付となる。

 
他にもいくつかの事例が取り上げられていたが、これらは立派なソーシャルビジネスであり、主催者は社会起業家と言えよう。イタリアではそのような呼び方をされておらず社会共同組合とか言っていた。
ボローニャは大学街なので若者が多いはずなのだが統計値では高齢化率が並外れて高く、大きな社会課題となっているという。そこで積極的に移民を受け入れ、彼らのための環境整備も本腰を入れてきたそうだ。その結果、人口の自然増の流れも出来たそうだ。中世以降、何度も街が破綻に扮する危機があったそうだがその度に乗り切ってきたという。その根底には「自主独立の精神」が根底にあるからだと番組は言っていた。そして時代の要素を取り込んで変化することが出来たからだと。
精神的に自立した個が社会的弱者を見捨てる事なく共に生きてゆくまさに「共生」してゆく社会は、日本の参照すべきモデルとなりうると思った。一朝一夕で築ける伝統ではないが、意思しなければ何も始まらない。
 

世界最古の総合大学 ボローニャ大学

 
 

◆ 編集後記 ◆

20代半ば頃、イタリアにすっかり魅せられて毎年のように通っていた時期がありました。僕はどちらかというと南部の都市が好きで、ナポリやパレルモ、その周辺の街を歩き回りました。
ナポリも社会弱者に優しい街で、多くのカフェの入り口に賽銭箱のようなものが置いてあり、そこに普通に利用者がお金を入れてゆくのを見ました。これは何ですかと尋ねると、貧しくてコーヒーを飲めない人のために利用者が善意で余分に払っていくシステムだと聞きました。
ホームレス、年金生活者、移民等々の人々がその厚意に頼るとのこと。北部の大都市とは異なり、街自体は決して豊かではないナポリ。しかし単なる優しさだけでなく街の精神的な奥行きを感じさせられた僕は、ますますナポリ好きになりました。“Viva Italia !”
 

さあ今日も拳を上げて前進だ!
 
 


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