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【 ROCKY通信 】第239回  袴田事件 感情的投影論 

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【 ROCKY通信 】第239回  袴田事件 感情的投影論 

 

勝訴報告を受けた袴田さん(引用: d メニューニュース)

 

若き日のボクサー時代の袴田さん(引用:無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会)

 

袴田巌さん(88)の無実が証明された。静岡県清水市で4人の殺人者に問われ、裁判で戦い続けること58年。先週木曜に静岡地裁から出た最高の判決だ。1966年33歳の時に投獄され服役すること累計47年。冤罪で死刑判決を言い渡され、人生の最も大切な時期を棒に振ってしまった。しかし、高齢の実姉ひで子さん(91)の58年にわたる人生を懸けた闘いで、現世で無罪判決を聞き届けることができたのだ。個人の名誉と尊厳を回復できた最高の瞬間だ。

しかし約半世紀にもわたり誤捜査、誤判決を繰り返され、自分の人生を振り返った時にどういう思いが残るのだろうか。失ったその時間は返って来ない。今回の判決には再度負の感情を強く喚起される面もあるのではないか。

 

この裁判を初めて知ったのはたしか中学生の頃だった。定期購読していたボクシング誌に時々取り上げられていたからだ。冤罪という言葉もこの時初めて知った。そう、袴田さんは元プロボクサーだったのだ。当時は今以上にボクサーに対する偏見が強く、それが死刑判決に影響を与えたそうだ。当時から僕はこの人はやっていないと直観していた。僕も練習生として3つのボクシングジムでお世話になってきたが、どのジムの会長も署名活動や募金活動を積極的に行っていたので裁判の経緯は何となく知っていた。ただ事件の顛末そして約60年にわたる裁判の経緯は新聞紙上やWEBニュースなどでも取り上げられているので、ここでは踏み込まない。47年という袴田さんの投獄期間中のココロに、自分のココロを重ね合わせるということをしてみたいと思った。感情的な自己の投影だ。

 

47年という投獄期間は死刑囚として世界最長のギネス記録らしい。何故ここまで時間がかかってしまったのだろうか?そして袴田さんは獄中で日々何を考え感じていたのだろうか?仮に自分が何かの冤罪で投獄されたとしよう。まずは当然判決を受け入れられるはずはなく、怒り、悔しさ、悲しみ、恥ずかしさ等あらゆる負の感情に支配され、孤独な独房で発狂してしまう気がする。人生で最も大事な自由が奪われ、外の景色すら眺められず他人との会話もままならない中で、明日のジョーの矢吹丈のように壁や寝台を殴りまくるかもしれない。

 

そして深夜1人布団の中で夢想することだろう。大地震が来たり戦争が起きて拘置所が崩壊し、脱獄できる日のことを。そして退所後に成し遂げることのできる夢をひたすら妄想する気がする。実際南アフリカのマンデラは27年間そうして耐え抜き、保釈後に大統領となった。しかし、袴田さんは47年だ。47年もそれをやり続けることが出来るだろうか?想像しただけで気がおかしくなりそうだ。強い信仰でもなければアイデンティティを維持できないと思う。また獄中の時間の経過とはどのようなものなのだろうか?ひたすらゆっくりと時が流れるのか、それとも強制労働や強制ワークショップなどで実は早く時が流れるのだろうか。想像がつかない。狭い独房には慣れたとしても、時の経過には簡単に慣れることはできない。ひょっとするとメンタルをやられてしまって、精神病状態になる気もする。動物園の檻の白熊のように同じ動作をひたすら繰り返すとか、独り言を延々としゃべり続けるとか。

 

袴田さんはどれだけ強いメンタルを持ち合わせていたのだろう?裁判のたびに精神鑑定があるそうだが、クリアして来たそうだ。長期にわたり死刑がいつ確定し実行されるのか分からないという不安や恐怖は想像もできない。ひょっとするとそこはプロボクサーという命懸けの戦いを経験してきたことがプラスに働いていたのかもしれない。そういえばマンデラもボクサー経験者だった。獄中で無罪を勝ち取ることを諦めてしまえば、自殺もあるだろうし逆に早く死刑執行して欲しいと弱気に傾くかもしれない。獄中は1人だ。いくら姉のひで子さんや弁護団、支援者が塀の外から応援していてくれていたとしてもだ。袴田さんの信念や忍耐力には本当に心の底から敬意を表する。

 

もう遅いかもしれないが、国や県はしっかりと袴田さんに補償すべきだ。

そして検察がもう控訴しないことを心から祈る。

 

 

袴田さんと姉ひで子さん(引用:中日新聞)

 

Wikipedia袴田事件

https://ja.wikipedia.org/wiki/袴田事件

 

補記

ボブディランに“ハリケーン”という名曲がある。彼のプロテストソングの代表作だ。実はこの曲は奇しくも同時期にアメリカで1960年代半ばに起きた殺人事件がテーマとなっている。黒人のプロボクサー、ルービン・カーター(通称ハリケーン)が冤罪事件の実話だ。カーターは、22年の拘留を経て、自由の身となった。

ボブディラン “ハリケーン” YouTube

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