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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
昨年から複数の友人知人に岩国市の錦川清流線(錦川鉄道)に一度乗ってみるといいと勧められていた。先月、岩国に用事があったのでちょうどいい機会となりトライしてみた。全く予備知識は無かったのだが、往復2時間の束の間の良い気分転換となった。この鉄道は錦川鉄道が運営し、岩国と錦町の約30キロの道のりを1時間強で走るものだ。
帰京して調べてみると1987年に国鉄旧岩日線を転換し、岩国市、山口県、地元有力企業が株主の第3セクター方式となっている。本社(錦町駅と一体)で職員さんに色々質問してみたが開線以来36年赤字続きだと言っていた。会社や錦町の話などとても親切に教えてくれたが、やはり3セクだからだろう、あまり自社の経営については関心がない様子だった。
堅い話は脇に置いて、岩国から錦町への旅は快適だった。車両は沿線を意識した川魚がペイントされていて可愛い。岩国駅からしばらく街中を走り、その後錦川沿いに北上し里山を通過し山間部をひた走る。ほんの1時間で俗界から徐々に自然界に誘われる感じで心地よかった。
清流といえば四万十川が有名だが、スケールは小さいが僕は錦川の方が好きだ。理由は山と川の対比性だ。山の迫る谷間を川が蛇行しつつゆったりと流れる風情、そして川の水の清澄さだ。清流なのに渓流のような水の透明感がある。きっと水墨画にしたら錦川の方が美しく描かれるだろう。
嬉しかったのは運転手がここぞという写真撮影ポイントでは解説してくれ、またスピードを落としてゆっくりと走ってくれる親切さだ。時々ミニトンネルを通過するのだが、この小ささがワクワク感を刺激する。なんだかディスニーランドのアトラクションのようだ。車内を見渡すと、観光客オンリーで、シニアのご夫婦が7割、残りの2割が3世代ファミリー、そして最後の1割が鉄オタと呼ばれる人々。きっと祭日だったのでそういう客層だったのだろう。職員の話では、平日でも通勤通学で使う人は少なく、利用客は観光客依存だそうだ。
このカワイイ電車を、この美しい路線を地元民は愛していて、なんとかして残したいそうだ。Wikipediaにあった2018年の同社のPLをみると年間約2500万の赤字額だが、きっと既に経費は切り詰めていることだろう。それより1日約7万円の収益を増やせば黒字化出来る。観光客の平均客単価を仮に2千円とすると、1日35人乗客を増やせば良い寸法だ。すでにあらゆる手を打ち尽くしたのならそれすら厳しいかもしれないが、まだアイデアを出す余地があるのなら黒転は叶わぬ夢ではない。
個人的に現状のままでも楽しい乗車体験だった。あの奇を衒わない感じがいい。自然をのんびり走るのどかな走り、車窓からの美しい山水画的な風景が良かった。しかし乗客数を増やすにはもうちょっと個性が欲しい。電車へのハードの追加投資はしにくいだろうから、車内外でのソフトコンテンツしかない。各駅ごとの個性を出してもいいだろう。僕は今回終着点の錦町駅しか下車しなかったが、駅外には自然以外には特に楽しいものは見つからなかった。
発想としては沿線を全体として捉え直し、シニア客層の喜ぶ健康要素と食の楽しみを演出する。駅とその界隈ごとで特長を引き出して駅員総出でもてなし感を演出。現在、廃線化が議論されているそうだが、インバウンド客も取り込みつつ内需もさらに喚起してぜひ頑張って欲しい。