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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、皆さんが、人生やビジネスのヒントとなるようなお話をさせていただければと思います。
皆さんのお役に立てましたら幸いです。
オーバーツーリズムという言葉をよく聞くようになった。観光公害とも言われておりネガティブな捉え方となっている。外国人観光客の急増による地域住民や地域環境への悪影響が喧伝されている。代表的な観光地、京都、広島、鎌倉、沖縄といったところで発生しているということだが、僕の住む東京でもここのところインバウンドの急増は日常で感じられるようになった。
弊害としてはゴミのポイ捨て、パブリックスペースでの大声での会話、私有地等への立ち入りといった問題からトイレ不足、観光バスやゴーカートによる交通渋滞問題まで色々あるようだ。
しかし、円安もあるとは言え、経済効果はそれらをはるかに上回るものがあるのではないか?そしてそもそも海外の人々から何の興味も持ってもらえない観光貧国になるよりは、はるかにマシではないか?それら諸問題をうまく解決してゆくことで真の意味での先進国家、あるいはコスモポリタンになってゆけるのでは?と個人的には思う。
東京の渋谷、新宿、銀座といった街を歩くと、極端に言えば3分の1以上がインバウンド旅行者ではないかと感じられる。特に渋谷のスクランブル交差点は歩行者の半分以上がそのように感じられる。人々は楽しそうにスマホを頭上に掲げて交差点内で立ち止まったり、ゆっくり歩いているのですぐわかる。数のデータは知らないが、日によってはこちらが前に進めないこともある。ただ、僕はそこで公害だとは感じていない。
思い出すのはNYのタイムズスクエアだ。世界中からの観光客が集結して、思い思いに写真を撮りつつ楽しんでいる。渋谷の外国人観光客はQフロントビルをあのタイムズスクエアのビルボードに見たてた感じで、信号が青になると同時に一斉に異なる角度から歩く人々を嬉しそうに撮影している。もう渋谷の風物詩だ。ついに東京もそうなったのか、世界有数のビジネス都市というだけでなく、国際観光都市の仲間入りをしたんだなという感慨が湧く。ポジティブな感情しかない。
マリオにコスプレしてゴーカートが街を走り回る姿も、確かに交通妨害や騒音の側面もあるだろうが、街を歩く時の自分にはエンタメ的な刺激を与えてくれる。仮装マリオから無邪気に手を振られると、こっちもつい手を振り返したり笑い返したりしてしまう。
近ごろ特に目に付くのは、彼らが都内を走る公共バスを使い始めたことだ。コロナ収束後、それも夏あたりからの現象だ。東南アジア系が使い始め、次に中韓国の東アジア系が、そして最近特に増えているのが欧米系だ。安くて便利で、都民の日常風景も垣間見ることができるので一石三鳥だ。彼らの多くが大概運賃の支払いでの決済手段のことで運転手とやり取りしている。それが3名以上のグループだと5分くらいになる時もある。運転手も大変だ。
リュックや手荷物の所持くらいならいいが、大きなスーツケースと一緒に乗車してくる人も結構いて、これは確かに困る。老人や赤ちゃんを抱いた女性が降車の際に特に困っている。あと、大声で話している若者のグループとかもいて、バスの運転手から頼まれてそっと注意することもある。こちらも急いでいる時などはイラっとすることもあるが、車内はいろんな国々の言語で彩られているのは実に楽しい。東京の日常に刺激を与えてくれ、また国際都市に仲間入りしたような気がしてシビックプライドの感情につながったりもする。
アニメやハイテクだけでなく、「安全で衛生的で食も豊かなホスピタリティのある文化国家」という印象を持ってもらえることは国として大きなプレゼンスになるのではないか。この国の文化や歴史、自然をライブで体験してもらうことが日本のコアなファンを作ることになり、これまでのステレオタイプな固定観念「ひたすら真面目に長時間働き、楽しむこともなく、小さな家で汲々と生活している日本人」というイメージを変えられるのではと思う。
経済的にはあまりに停滞期間が長く、国際通の外国の友人達からは「もう国際的には日本のことなんか話題にすらならないよ」と真顔で揶揄されるが、まあ今に見てろと言いたいところだ。日本はこれから文化国家としても再興するのだ。