近年注目されているソーシャルビジネスとは、どのようなビジネスなのでしょうか?一般的には社会課題を解決することを目的としたビジネスのことを言いますが、このページではその詳しい定義や事例をご紹介していきます。
ソーシャルビジネスは、シンプルに言うと、「社会課題の解決を目的としたビジネス」です。貧困の解決や障がい者の支援といったような課題の解決を事業化して収益を上げていくビジネスと言えます。
より具体的な定義として経済産業省の定義とソーシャルビジネスを世界に広めたムハマド・ユヌス氏の定義をご紹介します。
経済産業省のソーシャルビジネスの定義
2007年に発足した経済産業省のソーシャルビジネス研究会によると、ソーシャルビジネスの定義は以下の3点を満たすこととされています。
社会性、事業性は確かにという感じですが、革新性が入っているところが面白いところですね。
ムハマド・ユヌス氏のソーシャルビジネスの定義
アジア最貧国の一つとされるバングラディッシュにおいて、貧しい人を対象にお金を貸し出す銀行、グラミン銀行を立ち上げ、2006年にはノーベル平和賞も受賞されたムハマド・ユヌス氏。
彼がソーシャルビジネスという言葉を世界中に広めたと言われています。ユヌス氏は「ユヌスソーシャルビジネス7原則」という概念を提唱しています。
ユヌスソーシャルビジネスの特長は3番と7番に象徴されます。
どちらもユヌス氏の哲学や人柄が色濃く反映されています。
このソーシャルビジネスに取り組む起業家のことを「社会起業家」といい、同様にソーシャルビジネスに取り組む会社のことを「社会的企業」といいます。
では、実際にソーシャルビジネスにはどのような事例があるのでしょうか。代表的な会社をいくつかご紹介したいと思います。
■グラミン銀行
先ほどもご紹介したムハマド・ユヌス氏がバングラディッシュで立ち上げた銀行です。「世界から貧困をなくす」という使命のもとマイクロファイナンス(少額の融資)を通じて貧しい人たちが自分で商売を始め自立していく支援をしています。今では、全世界に組織を広げており、日本国内でも「グラミン日本」が貧困解決のために活動しています。
■マザーハウス
創業者で代表の山口絵理子さん自身の経験から、途上国から世界に通用するブランドを作りたい。途上国の人たちに雇用を作り出したいという想いでスタートしたバッグのブランドです。高いクオリティとデザイン性で国内でも人気のブランドになっています。山口さんの著書「裸でも生きる ~25歳女性起業家の号泣戦記~ (講談社+α文庫)」では、壮絶な彼女の人生と起業のストーリーが描かれています。
■パタゴニア
アウトドアウェアブランドとして人気のパタゴニアは、商品としての品質はもちろんのこと、開発において環境にできる限り負荷のない商品づくりを徹底していることで知られています。また 売上の1%(利益ではなく!)を地球環境保護のために寄付する活動も1985年から続けています。「社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論(東洋経済新報社)」では、創業者の経営の原点やユニークな人事制度も紹介されています。
■TOKIMEKU JAPAN
創業者である塩崎良子さん自身が、若年性の乳がんを患い、長く辛い闘病生活の中で気づいたファッションの力を、より多くの人に届けようと立ち上げたケア用品ブランドの会社です。病気になったって歳をとったって自分らしく輝ける社会のために様々な商品を展開しています。
ソーシャルビジネスに取り組んでみたいと思ったらどうしたらいいのでしょうか。まずは一般的なビジネスと一緒でビジネスプランを作ることから始めるのですが、ソーシャルビジネスには独特の考え方があります。
それは、「どんな社会課題を解決するか?」を最初に定義することです。社会課題の当事者は誰で、その人は何に困っていて、その現状をどのように変えたいと思っているのか?をしっかりと考え抜くことがスタートとなります。
一般的なビジネスは市場や顧客や商品・サービスを考えていけばいいのですが、ソーシャルビジネスはその前に社会課題を定義する必要があるんですね。そしてそのうえで、その社会課題を解決するためにどんな方法(ビジネス)があるのかを考えていく流れになります。
この整理によっては、「株式会社」という形が良い場合もありますし、「NPO法人」が良い場合もあり、「一般社団法人」の方が適している場合もあります。
いかがでしたか。
ビジネスとして収益を上げながら社会課題を解決していくソーシャルビジネスは、より良い社会をつくっていく上で重要な役割を担っていくことでしょう。