社会起業家とは?その定義は?他との違いは?事例は?必要なことは?
近年、社会起業家といわれる人たちが注目をされています。社会起業家とは、どのような起業家なのでしょうか?
その定義や事例、条件を分かりやすく解説していきます。
社会起業家とは、ビジネスの手法で社会課題を解決する事業を起業する人のことです。
日本では「社会起業家」と呼ぶことが多いですが、他にもソーシャルアントレプレナーや、チェンジメーカー(社会変革の担い手)とも呼ばれます。
また、社会課題を解決するビジネスのことをソーシャルビジネスと呼びます。そのため社会起業家はソーシャルビジネスで起業する人とも言えます。
まずは、そんな社会起業家にまつわる様々な言葉の定義を確認していきながら、社会起業家について詳しく理解を深めていきましょう。
ASHOKA(アショカ)は、世界で一番最初に社会起業という概念を提唱したビル・ドレイトン氏が1981年に立ち上げた非営利活動組織であり、約3,800名の社会起業家を発掘・支援し、全世界92ヵ国以上で活動しています。
そんなASHOKAによる社会起業家の定義は、下記の通り。
根の深い社会問題を、社会システムそのものを変革すること(システムズ・チェンジ)で解決しようとするソーシャルアントレプレナーシップを持った人物
「ソーシャルワーク(社会福祉)」の目指すゴールを、「アントレプレナーシップ」の特徴である戦略、戦術、スピードを使ってアプローチするという概念
参考として、ASHOKAでは4つのソーシャルインパクトと社会起業家の関係性を下記の通り明確にしています。
ASHOKAはこの中で、3.システムズ・チェンジ、4.フレームワーク・チェンジを行う者こそが、社会起業家であると定めています。
2007年に発足された、経済産業省のソーシャルビジネス研究会によると、ソーシャルビジネスの定義は以下の3点を満たすこととされています。
ムハマド・ユヌス氏は、アジア最貧国の一つバングラディッシュにおいて、貧しい女性たちに少額の融資(マイクロファイナンス)を行う「グラミン銀行」を創設し、彼女たちが自ら商売をはじめ自立する支援を行い、2006年にノーベル平和賞を受賞した世界的に有名な社会起業家です。
そんなムハマド・ユヌス氏が掲げる、ユヌス・ソーシャルビジネス7原則は、下記の通り。
ソーシャルビジネスはその他、社会的企業、社会企業と呼ばれることもありますが、社会的企業の定義を内閣府では以下のように定義しています。
2010年より、日本初の社会起業家の育成・支援を行うソーシャルビジネススクールの社会起業大学では、社会起業家の定義を下記の通り定めています。
ビジネスを手段に、ソーシャルミッション(自分だから果たせる社会的使命)の実現に取り組む起業家
また、社会起業家は、「自分の才能を生かして、誰かの役に立つこと」に深い喜びを感じる人物であり「社会課題」 「自分らしさ」 「ビジネス」 の全てが重なる領域における起業、すなわち“自分らしく社会貢献する起業”を実現していることが特徴である
社会起業家にまつわる言葉の定義を確認してきましたが、「企業も社会貢献しているのでは」「わざわざ起業家に社会とつけなくても」と感じられた方もいるかもしれません。実際に「社会起業家と起業家の違いって何ですか?」というご質問もよくいただきます。そこで起業家との違いについても明確にしておきたいと思います。
結論から言えば、「事業目的の違い」です。
従来的な起業家は、利益を最大化させることや事業を拡大していくことを目的としているのに対し、社会起業家は、SDGsに代表されるような様々な社会課題を解決するために自分自身が果たす使命や役割を実現することを目的としています。
事業内容のみで考えれば、どちらも課題解決を行っており、それは誰かに貢献しているという点において共通していると言えます。ただその課題解決を手段としているのか、目的としているのかという点で大きく異なる、それが大きな違いと言えます。
また社会起業家の行う事業はボランティアとは異なるということも明確にしておきたいと思います。
ボランティアとは一般的に、自発的に他人・社会に奉仕する人または活動を指し、公共性があり、無償で奉仕するということが前提になります。
しかし、社会起業家が行う事業(社会貢献事業、社会的企業、ソーシャルビジネス)は、収益を上げて持続可能なかたちにする必要があります。なぜなら、困難な課題を抱える当事者に対して、一過性で終えることなく継続的に課題解決を図っていく必要があるからです。
ここが大きく異なる点といえます。
資金調達の方法としては、クラウドファンディングや財団などから寄付、国からの助成金、融資や自己資金など様々です。
事業形態も、株式会社、NPO、合同会社など様々です。
さて、定義や他との違いについて確認してきた社会起業家ですが、近年増加傾向にあり、ソーシャルビジネスを手掛ける企業数は、この10年間で8,000社から20.5万社と、約25倍の急成長しているとの報告もあるほどです。(出典:内閣府「我が国における社会的企業の活動規模に関する調査」2015)
では、実際にどんな社会起業家たちがどんなソーシャルビジネスを展開しているのか、その事例をご紹介します。
6歳の頃にサンタさんからクリスマスプレゼントをもらった感動体験が忘れられず、クリスマスイブの夜にサンタさんが、小さなお子様がいる家庭にプレゼントを届ける「サンタ活動」を2008年より開始。
延べ1万人以上の子どもたちにプレゼントを届けた結果、経済的理由など家庭の事情によりプレゼントがもらえない子どもたちが多くいることがわかる。
「子どもたちに愛された記憶を残すために、サンタクロースのような人を増やす」をソーシャルミッションに、2014年よりNPO法人化し本格的に始動。
現在、サンタ活動は延べ1万5千人以上のチャリティサンタが4万人を超える子どもに届け、30都道府県42支部にまで拡がり続けている。
「サンタ活動」を各地域に根ざした継続的なコミュニティ・文化に育てていくことを通じて、社会全体で子どもを支え合う社会を目指している。
姉の影響で幼少の頃からファッションが大好きで、25歳にセレクトショップやドレスレンタルショップ等を営むアパレル会社を起業。
突然、若年性乳がんを発症し、闘病生活を余儀なくされ会社は閉じざるを得なくなり、これまでの生活と一変し、がんサバイバーとして辛く苦しい生活に。
そんな中、主治医の先生から「病院でファッションショーをやってもらえないか?」という思わぬ提案から、がん患者によるファッションショーを開催し、大成功を収める。
その経験から、 「ファッションを通じて、患者らしくではなく、私らしく輝いて生きることに寄り添う」をソーシャルミッションに、入院患者向けケアファッションブランド「KISS MY LIFE」をスタート。
現在は、ケアファッションブランド業界のトップブランドとなり、「誰もが人生の最後まで、自分らしい生活をおくれる社会の実現」を目指している。
大学3年生の時に東日本大震災が発生。「被災地で困る人たちのために何かしたい」と居てもたっても居られずにその2日後に復興支援団体SETを設立し、縁もゆかりもなかった岩手県陸前高田市広田町へ。
活動開始当初は、被災地の惨状を前に、そこにあった生活を想像し心が押しつぶされそうな気持ちになりながらも、ある住民の 「50年後、この町はなくなるかもしれない。でも残し続ける必要がある。それが生かされた俺らの役割だから」という言葉を受け、大学卒業と同時に広田町へ移住。2013年にNPO法人化し本格的に始動。
「民泊修学旅行」「1週間の地域おこし実践プログラム」「4か月間の国内留学」など、自分たちのような首都圏の大学生や若者たちと地区の住民との交流事業を数々と展開し、「一人一人の“やりたい”を“できた”に変え、日本の未来に対して「Good」な「Change」を起こす」をソーシャルミッションに、 「人口が減るからこそ、豊かになる社会」を目指している。
様々な社会課題に対してソーシャルビジネスで解決を図る社会起業家たちですが、実は共通項があります。社会起業大学では、10年以上にわたる社会起業家研究をおこない、その共通項を下記の独自メソッド、「SEC METHOD(セックメソッド)」へと体系化してきました。
社会起業家は、「社会課題」「自分らしさ」「ビジネス」という3つの要素を持っており、それぞれが重なり合い存在しています。それぞれの重なり合いにおいて「ソーシャルミッション」「差別化」「持続性」という価値を見出し、すべてが重なる領域において、社会起業を実現されているという点で共通しており、社会起業家の条件と言えます。
いかがだったでしょうか?
社会起業家とは、単に「社会課題をビジネスで解決する起業家」というだけでは説明しきれません。
その課題解決に取り組むその人固有の目的、すなわち「ソーシャルミッション(自分だから果たせる社会的使命」が必ず備わっているのです。
だからこそ社会起業大学では、社会起業家を、
ビジネスを手段に、ソーシャルミッション(自分だから果たせる社会的使命)の実現に取り組む起業家
と定義しています。
生きがい働きがいに繋がる生き方働き方こそが、社会起業家にあると考えています。
さて、
あなたにとっての「ソーシャルミッション」は、どのような言葉になりますでしょうか?
そのソーシャルミッションを実現させるための「ソーシャルビジネス」はどんな事業になりそうでしょうか?
ぜひ、社会起業大学でご一緒に考え、言葉にし、カタチにしていきましょう。
現在、毎週オンライン無料セミナーを開催中ですのでぜひご参加ください。
ご参加を心よりお待ちしております。