【 ROCKY通信 】第98回 ボクに力を与えてくれた書 その3 読書について | 【公式】社会起業家を育成するソーシャルビジネススクール 社会起業大学

NEWS & BLOGS 一覧

セミナー 一覧

ロッキー林のイロジカルシンキング へ戻る

【 ROCKY通信 】第98回 ボクに力を与えてくれた書 その3 読書について

メールマガジンご購読者の皆様
 

いつもメールマガジンをお読みいただきありがとうございます。

社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
 

このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
 
 

【 ROCKY通信 】第98回
ボクに力を与えてくれた書 その3  読書について

ショーペンハウエル

 

今日で「ボクに力を与えてくれた書」の3連載の締めとしようと思う。まだまだ紹介したい本はたくさんあるが、今回は一旦これで。ご紹介するのはショーペンハウエルの「読書について」という書だ。なんともプレーンな書名だが、書名とは裏腹に鉄槌を打ち込んでくれる大胆で辛辣な内容だ。この書を知ることは、読書というものを考える上での挑戦状を突きつけられることでもあった。最初に読んだのは30代半ばだったと思う。大阪出張から東京への帰途で、読み切れそうな薄い本を書店で探した。その本を偶然手に取り購入した。そして車中その発想の斬新さ、表現の過激さ、あまりに本質的な内容に圧倒された。この方も根が“Punk Rocker”だ。

 

「読書について」 ショーペンハウエル著

 

ショーペンハウエルは19世紀ドイツの哲学者で、仏教、インド哲学の影響を受けた「生きることは苦しみである」とする厭世的な哲学者だ。ニーチェに多大な影響を与えたことでも知られる。観念論でなく具体的に「人生を生きて考え抜く」という点では前々回のエマソン前回の内村先生とも通底している。きっと僕の好みがそういうことなのだろう。

 

さて、この本でショーペンハウエルが言いたかったことを一言でまとめると「読書は自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである」ということ。他人の考えを反復的に辿るにすぎないと。つまり「ちゃんと自分のアタマで考えろ!」ということだ。ただ読んだだけでは無意味だと。僕は本に書き込みを入れる癖がある。そして著者と対話する。漫才のようにツッコミ入れることが多い。それが僕の読書の楽しみだ。おかげで古書店では売れなくなってしまうが。笑 ただ、著者が言うようにそれを自分のアタマで思索し、独自の思想にまで発展させるところまでは出来ていない。凡人には高い嶺だ。 

 

ショーペンハウエルとの対話

 

さて本書の中から著者の考える読書についての関連発言をいくつか拾ってみる。

 

「数量がいかに豊かでも、整理がついていなければ蔵書の効用はおぼつかなく、数量は不足していても整理の完璧な蔵書であれば優れた効果を収めるが、知識の場合も全く同様である」

「いかに情報を多量にかき集めるよりも、自分で考え抜いた知識であればその価値の方がはるかに高い」

 

いたずらに多読乱読して知識の量を増やしたところで(インプット)、それがきちんと使いこなせるように(アウトプット)なっていなければ意味が無いと。やたら蔵書数だけ多い整理できていない図書館なんて使えないでしょう?と比喩を交えて説明する。読書はそれ自体が目的では無い。知識の増加だけが目的でも無い。そこで思索を加えて自分の血肉化して初めて意味あるものとなるのだと。これは仕事にも通じる話で、何かを決断する際に最低限の情報はインプットとして必要だが、決断に完璧を期そうとするあまり情報収集に時間をかけすぎる傾向がある。多分ショーペンハウエルなら限られた情報量でも考え抜いて答えを捻り出しなさいと言うであろう。また知識や情報はあくまで素材であって、それを自由に使える道具とするには自分の中で独自化のプロセスを踏めということか。

 

「書物から読み取った他人の思想は、他人の食べ残し、他人の脱ぎ捨てた古着にすぎない」

 

この表現のエッジの利かせ方がなんとも辛辣で愉快。そして時として自分も含め多くの人々がそうであることは否めない。他人の知識、思想をとりあえずインプットしただけで、さも自分の意見であるかのように語り散らす、、、実に恥ずかしい限りだ。己の思索を深めることは「個の確立」であり、福澤諭吉のいう「独立自尊」や夏目漱石のいうところの「個人主義」にもつながる主張だ。このようなリベラルアーツ的な教育の強化が、日本再生のヒントの1つなのかもしれない。

 

「人は誰でも自分の興味を引くもの、あるいは自分の思想体系、あるいは目的に合うものだけを精神の内に留める」

「もともとただ自分の抱く基本思想にのみ真理と生命が宿る。我々が真の意味で十分に理解するのも自分の思想だけだからである」

 

このあたりの内容が著者らしく、主著である「意志と表象としての世界」ともつながる。前々回のエマソンの主張とも合致する。僕の解釈は、読書という他者からのインプットを自分の基本的な考えに対峙させ、取捨選択し(それが思索)、選んだものをその体系に組み込んでゆくことがポイントだろうというもの。例えで言うなら、同じ栄養価のある食物でも自分の好みのものを食べたほうがより吸収定着が良くなるといった感じだろうか。
今回紹介した書を、パソコンで考えてみた。アプリをひたすらパソコンに詰め込むのでなく、OSとの相性も考慮しつつちゃんと整理しながらインストールしてゆこうと。またOS自体もしっかりメンテしつつバージョンアップしてゆくことが大事だという理解をした。そうしないと良い仕事はできないよと。

 

「読書について」は薄い本だが、主張したい内容は明快で断定的で読む者に有無を言わせない迫力がある。著者自身はベルリン大学の同僚ヘーゲルとの出世競争に敗れ隠遁に至ったそうだが、なぜかその本質的な考え方と独断的な口調にとても惹かれてしまう。晩年に著した「幸福論」では、「幸福は外にあるのではない。自分の内面にあるのである」と述べたそうだ。大事なことを教えてくれてありがとう! 

 

ショーペンハウアー全集

 

 


メールマガジン登録(無料)はこちら


    【オンライン開催・参加無料】
    未経験からでも目指せる
    自分の才能を生かして誰かの役に立つ起業家へ
    社会起業家入門セミナー