メールマガジンご購読者の皆様
いつもメールマガジンをお読みいただきありがとうございます。
社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕が社会起業家の育成・支援に携わっている中での経験や僕自身の人生での学びや考えをシェアさせていただいています。
皆様の起業のお役に立てられましたら幸いです。
コロナ禍で、多くの人々が暴風雨が去るのを待つがごとく、100年紀の災難を固唾を飲んで見守ること既に2年が経過しようとしている。未曾有の経験に初めは固まっていたように見えた政府、行政、企業もアクションを起こし始めている。ではビジネス分野における起業はどうだろう?ニュースによれば海外ではこのコロナ禍に入ってから大きく起業数が伸びているという。例えば米国ではコロナ前の1.5万人から3万に増加している。企業のリストラで解雇された人々やそのリスクがある人々が転職でなく起業で自分のチャンスを掴もうとしているそうだ。巣篭もりとなってしまったものの、オンラインでコミュニケーションやコンタクトが取れ、モノの売買もできるという環境背景もあるのだろう。さて日本やいかに?
まさに「禍福はあざなえる縄の如し」。時勢はピンチであるがチャンスでもある。まずは精神性の話から入れば、ついに日本も良き意味で「個」の時代に入ってゆくことが想定される。自分で考え、判断し、その結果に責任を持つという当たり前といえば当たり前の行動だ。明治維新後、西洋に学んだ内村鑑三、福沢諭吉、夏目漱石といった諸先生たちがそれを主張し、欧米列強に伍さない為には日本人も「個」を強くするしかないと主張し、その流れが一旦出来つつあるかに見えた。しかし、2度の大戦における全体主義を経て昭和の経済復興する過程でそれを忘れてしまった。そして戦後は日本史上で最も集団主義的な精神性を形成してしまった。それが年功序列、終身雇用、新卒の一括採用といった日本式の雇用形態となり、社会システムとなり、近代日本のDNAとなってしまった。後出しジャンケンで批判するのは簡単だが、時代背景を考えれば致し方なかったともいえる。
コロナ到来の少し前から大企業を中心にジョブ型雇用という方向性が語られ始めた。昔からあった専門職という概念がイノベートされポジティブになった印象だ。なんとなく組織に属し、なんとなく勤め上げるのではなく、独自の専門性を持ったプロフェッショナルとしてそれを基軸にキャリアを積んでゆくというもので、これも「個」の時代への後押しとなる気がする。この独自の専門性が「ソーシャルミッション」や「自分軸」とベクトルが重なれば、ある意味理想的な自己実現が可能となり、新たな社会的価値も生み出せイノベーションの原動力になりえると思う。若者を中心に特定の組織に属すことが前提ではなく、プロジェクト単位で仕事をし、糧を得るという生き方はカウンターカルチャーとして定着してゆきそうだ。
コロナ禍に入り急に「今後は自分の人生は自分で考えて判断して生きてゆけ」と価値転換を迫られ、いきなり農耕から狩猟へとシフトさせられそうになって困惑している人々も多いと思う。皆で協働作業しつつ収穫を分け合うスタイルから、自分で糧を獲得しろと。協働作業であってもその中での自分の役割や成果を明確にしようと。一段と生きづらい世の中に向かっていると感じる人も多いであろう。が、ここは勇気を持って前に進むしかない。時代も人生も常に変わるのだ。諸行無常だ。自分自身も変えてゆくことが肝要である。
一方ビジネスチャンスという意味でいえば、これだけ働き方がダイナミックに変化し、生活形態が変化しているわけだから、そこにはこれまでに存在しなかった多くの「不」が山積みとなっている。不満、不便、不足、不安等々。その「不」を解決する手段を発見し提供することがそのままビジネスチャンスとなり新たな起業家のチャンスは拡大しているはずだ。SDGsと絡めてざっと俯瞰してみても、1、2、3、4、8、9、10、12、16、17と多くの連動目標があり、社会課題の解決という観点でも社会起業家に期待される場面も増えるものと思われる。社会起業家がさらに世界的に必要とされる存在となることは間違いない。
属性別に見てゆくと、
若者はこの環境下で自分の親世代が定年を迎えるにあたり茫然自失しているのを脇目に、大きな時代の変化に対応すべく副業、複業等で独自性を磨く事を始めようとしている。農耕に参加しつつ狩猟にもチャレンジ。これはチャンスとも言える。企業も人手不足とはいえ寄りかかられるよりも手離れのいい独立自尊系の社員が増えた方が好都合なのでそれらを奨励している。今や保守的なメガバンクですらそうだ。その延長線上に起業・独立のチャンスも芽生えてくる。
シニアは定年やリストラに怯えているが、ここは心機一転、何とか発想を切り替えよう。これまでの知見や人脈も生かして、このピンチを起業チャンスに変えてしまおう。企業によってはシニアを積極活用する方針を打ち出しているところもあるが、それすらいつまで続くかわからない。大きなリスクを取らない形で、人生100年時代を大いに楽しんでゆこう。その為にも早めの準備が必要だ。多くのシニア起業で成功している人々を見てきたが、みなさん早めに決断し、地道に来たるべき日にそなえて準備をしてきた方々だ。
女性は、企業勤務前提だと家事や育児などキャリア形成には不利な点は否めないが、それを逆手に取り自分の専門性を磨きながら生きてゆく道を模索しよう。女性ならではのリスクや危機への敏感な感性を生かし、このコロナ下における生活変化での「不」や「違和感」にビジネスシーズとなる社会課題を発見してほしい。そしてそれを起業につなげてみよう。