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社会起業大学 学長の林 浩喜(はやし ひろき)です。
このROCKY通信では、僕がベーグルというパンの専門店 “BAGEL&BAGEL” を90年代後半に起業してからのストーリーとそこからの経験や学びを御紹介させていただいております。
皆様の起業のお役に立てたら幸いです。
価格の決定はベンチャーであれ大企業であれ経営者が決断せねばならない重要事項である。なぜなら売上を決定づける要素だからだ。経営は知らずとも、売上=客単価×客数であり、客単価とは価格とほぼ同義であることはご存知と思う。そして経営とはシンプルに言い切れば売上から必要経費を差し引いた利益を追求するプロセスだ。つまり最終ゴールの利益に至るプロセスの起点を担っているのが価格なのだ。起業時に初めてプレーンベーグル(何も入っていない素ベーグル)1個の価格を決める時は悶絶したのを覚えている。生まれて初めての価格設定。誰も教えてくれない中で、本当に難産だった。笑
最初に考えたのは誰でもやるであろう、原価や販管費を弾き出してのコスト+αの発想。積み木でイメージするとわかりやすいのだが、原価から諸経費を積み上げてゆき、その一番上に欲しい利益を乗せた価格。これは、論理的な価格形成プロセス。
次にしたのが、競合調査。つまり同業ライバルがどんな価格を付けているかという市場からくるマーケティング視点のプロセス。4Pと呼ばれる有名なマーケティング戦略では価格が商品と並ぶ主役なのはその為だ。しかし当時は都内でベーグルを見つけることはできず、参考データは入手できなかった。そこで参考にしたのは本場NYの一般的なベーグル専門店の価格だ。それを有名チェーンのドーナツやマフィンといった同類商品の日米価格比較もしつつ、ベーグルは大体この辺りの値段では無いか?と当たりをつけてみた。
そして最後にベーグルのサンプルをコアターゲットの20代、30代のライフスタイル系の女性に試食してもらい、「これにいくら払えますか?」という質問を50人に投げかけて、その反応や意見を参考にさせてもらった。これは心理的プロセスとでも言いましょうか。
そしてこれら3本のモノサシを行ったり来たりしながら悩みに悩んだ。コスト+αのコストの価格を最下限とし、心理プロセスで聞いた高い価格帯を上限とし、その間のどこで決めるか。開業準備を進めながらの思考であったが、プレーンベーグルの価格が決まらないと、他の練り込み系ベーグルやサンドイッチの値段も決まらない。ようやく決断したのは、オープンまで1週間を切ったギリギリのタイミング。最後はエイヤで肚を決め、価格の書かれたメニューボードが完成したのはオープン前日であった。後日談として面白かったのが、その後現れた多くのライバル企業が“ベーグル&ベーグル”の価格に合わせて来たことだ。
日々、本当に静かです。いや静かという語感ではちょっと違う気がします。静寂、そう静寂。サイモンとガーファンクルではないが、“サウンド・オブ・サイレンス”とはこういうことなのだと思うに至る。都内の住宅街に住んでいるのですが、朝から全く人の声がしません。通行人も日中パラパラと買い物に行き来する人がいるくらい。車も宅配便以外はほぼ通らない。通算30年以上になる東京生活で、経験したことのない環境です。音の無い環境はある意味心を平穏にしてくれる。自然における静寂とはまた意味の違う大都会の沈黙。不謹慎かもしれませんが、結構好きです。
さあ今日も拳を上げて前進だ!