防衛装備における民間の役割に変革を起こしたい。ーそれが私の社会貢献。 小関清志さん
<小関清志(こせき きよし)さん プロフィール>
東京都保谷市(現在の西東京市)生まれ。大学卒業後、大手通信会社に入社、技術者として衛星通信などICTコミュニケーションの仕事に携わる。
30代で防衛省担当になり、護衛艦と地上とを連接する仕事などを経験。「防衛装備における民間の役割に変革を起こしたい」と43歳で退社、2017年、HORIZONディフェンスを立ち上げた。防衛省が必要としている技術や設備などの情報を中小企業に公開し、防衛装備の提案を行うエンジニアリング・コンサルティングを行う。「情報は、人をもっと強くする」をモットーに、防衛産業と一般の会社をつなげるという前例のないミッションに挑む。

護衛艦を衛星通信を介し地上とつなげる仕事

――会社員時代はどんなお仕事を。

 民間用のICTコミュニケーション構築の仕事をしていましたが、30代半ばに、防衛省の担当になりました。そこで主に手がけたのは、衛星通信を介して、護衛艦と地上の各種システムを連接する仕事です。例えば海上自衛隊には、遠洋に派遣する艦と地上が衛星通信を介し、安くてしかも安定して話せるシステムをご提案いたしました。そのため横須賀や佐世保、呉、舞鶴、大湊などの基地を毎月のように出張して訪問し、海上自衛隊の担当者と打ち合わせを重ねました。海上自衛隊の根本にあるニーズを探り、期待を上回るような提案ができるよう苦心した結果、ご満足いただけるシステムになったと自負しています。
 その後、海上自衛隊の派遣先の様子をリアルタイムで確認できるシステムも担当しました。海外災害派遣で海上自衛隊の船が人命救助のため現地に向かった際、被災した現地の様子が、そのシステムを通して日本に送られました。自衛隊の担当者から運用に役に立ったとお言葉を頂き、技術者の一人として誇らしい気持ちでした。

――防衛の仕事はどうでした。

 防衛産業に従事する技術者たちは、非常に誇り高く、使命感に燃えている人たちが多いと感じました。自分たちの技術が自衛隊に結集しており、それを前進させることが「日本と世界の平和に貢献するという信念」に一点の疑いもない。そうでなくてはあの情熱は理解できません。ビジネスとしても成立し、社会性ある。私もわりと水があっていたと思います。

多くの企業が防衛と直接つながることが国を強くする

――それではどうして会社を辞めて、起業されたのですか。

 仕事は面白かったです。退社すると言った時には、お付き合いのあった他社の技師たちから非常に驚かれました。でも私にはある思いがありました。
 現在は防衛省と一次的な契約をするプライムと言われる大手企業が中心になって装備や技術の受注をしています。例えば三菱重工業や日本電気、川崎重工業などがピラミッドの頂点におり、その傘下で多くの企業が参加している。しかしこの方式だけでは限界を感じるところがあり、またイノベーションも起きないところもあると感じていました。
 私はもっと多くの民間企業や研究機関、大学が防衛装備分野と直接つながるべきだと思っています。その方が防衛省としてもいろいろなアイデアや技術を民間から得られるし、中小企業にとってもビジネスチャンスが広がる。このことが国を強くする方向に向かう。「防衛分野の社会的変革を技術の分野からやってみたい」という思いで会社を辞め、起業しました。
 将来は、民生と防衛の技術転用を推進するよう事業を進めていきたいと思っています。

――具体的には。

 現状では、例えばプライムと呼ばれる大手企業がアメリカで開発された技術やソフトを買ってきて、輸入代理店として防衛省に納めただけという事態になりかねない。このやり方では日本の産業への貢献度合いが少ない。象徴的な例としてF35という次期戦闘機は、日本は完成品を購入するだけということになりえます。そうなると、故障したらアメリカに送って修理してもらうしかない。これでは日本の技術は進歩しません。
 日本の防衛産業に技術が蓄積されるようにするべきですし、国際共同開発の一員として参加していくべきです。

――HORIZONディフェンスはどんな会社ですか。

 防衛省・自衛隊では多くの優れた技術・サービスを必要としています。弊社は、防衛産業に新規参入する民間企業や研究機関、大学などに対して、世界の防衛施策や最新技術の情報などをもとに総合的なサポートを提供するエンジニアリング・コンサルティングの会社です。国内の企業が一社でも多く防衛産業とつながることが、日本と世界の平和と安全に寄与すると考えています。
 また、防衛に関する情報、知識を幅広く多くの方に提供するべく、オンライン上の会員制サロン「防衛サロン」を昨年開設しました。入会すると自衛隊OBや安全保障の専門家のアドバイスを受けられ、トークイベントや見学ツアー、勉強会に参加できます。
 なお、「防衛サロン」には防衛産業に興味のある企業も参加されており、実際に「自社のドローン技術を防衛省に提案できるか?」といった相談も受けました。

「周りの人たちを巻き込めるのか」試してみたかった

――社会起業大に入学された動機は。

 いまの世の中では「防衛について確固たる意見をもつことは気恥ずかしい風潮がある」ように感じます。
一般にはなかなか防衛や安全保障のことについて話せる雰囲気にならないからでしょう。
いろいろな人が集まる社会起業大の中で防衛のことを話したら、皆さんはどういう反応をするのだろう、と興味がありました。反論があるなら反論してくるだろうと。そして、その中で自分が周りの人に影響を与えて、巻き込んでいけるかを試してみたかったのです。

――それで巻き込めましたか。

 やはり最初は同期の学生たちは、防衛について「関心がない、聞きたくない」という反応でした。でも、語っていくことで、若い世代には興味を持って聞いてくれる人が出てきました。後に、同期の中でしっかり話を聞いてくれる友人も出てきました。
 同期の仲間たちとはよく食事や、飲みに行きました。みんないろいろな価値観を持っており、現実を踏まえたうえで理想や思いを語るので場が盛り上がり、その雰囲気は心地よいものでした。「こういう楽しい場を土台として守っているところに防衛、安全保障がある」のです。
 自分の考えや活動をプレゼンテーションする中間発表では、社会性のあるビジネスモデルを話したところ、多くの人の共感を集めることができ上位に選ばれました。社会起業大学は様々な価値観が集まる場ですが、防衛や安全保障のことを伝える難しさを感じました。それでも自分の想いを地道に伝えていくことで、理解してくれる人も確実に増えてくると感じました。

防衛のことが当たり前のように語れる社会に

――将来の夢は

 例えば、「サイバー戦争」というテーマでシンポジウムを開催したと仮定します。それをインターネットでライブ配信すると100万人のアクセスがあり、すぐさまネット上にスレッドが立ち、そこでの活発な議論は政治や技術の分野にまで発展していく。このように防衛に関する話を人々が当たり前に語り、そしてビジネスとしても防衛に関心を持っていくような社会になって欲しいですね。そのために尽力していきたいと思っています。
 若者たちには、理系も文系も防衛分野の研究者として生活できるようになって欲しいし、そのサポートもしたいと考えています。また若いIT分野の起業家たちには、その技術が防衛分野で活用できるのか、真剣に検討してほしいと願っています。

(撮影・記事 朝日教之)


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