林 浩喜|起業アイデアのきっかけは住友商事での出会い | 社会起業家を育成するソーシャルビジネススクール 社会起業大学

Hiroki Hayashi, interviewed
by Sumitomo Corporation

林 浩喜 インタビュー①

起業アイデアのきっかけは住友商事での出会い

住友商事で培った経験や人脈を生かして、異なるステージで活躍するアラムナイの方々に、住友商事で得たもの、そして今後の連携の可能性についてお話を伺いました。

林 浩喜 インタビュー②

社会起業大学 学長
周南公立大学 特任教授

林 浩喜さん


Profile

1987年に住友商事に入社。建設部(当時)の営業を6年間担当したのち、1993年に退職。その後私費でMMH(サービス産業のMBA)取得のためアメリカのコーネル大学ホテル経営大学院に留学後、現地で複数のフードサービス会社でマネジメント業務に携わる。1997年にBAGEL専門店『BAGEL&BAGLE』を起業。130店舗を展開、3工場を運営し、20周年を迎えたのちにエグジット。その後、「社会起業家」の育成を行う私塾、社会起業大学の学長に就任。現在は教育者として、受講者の育成や支援に注力。

誰もやっていないことに
目を向けた

私の祖父は事業家でした。戦後自ら起業して事業を軌道に乗せ、さらにお金を稼ぐことにとどまらず、生涯を通じて社会貢献を大切にしてきた祖父の「伝説」は、聞くたびに私の心を熱く燃え上がらせました。そして「自分の進む道は自分で切り拓きたい」————いつしか私にもそんな気持ちが芽生えていました。

住友商事への入社は1987年。建設部へ配属され、不動産会社、地主などをお客様として、建築工事の請負や企画コンサル、仲介などを担当していました。ある程度の基礎が身についた3年目、「もっと会社に貢献するためには言われたことだけをしていてはだめだ」と、独自で法人向けの営業を開始しました。当時はバブル景気による不動産高騰に加え、就職は売り手市場。福利厚生も企業選びの一つの要素となっており、その一環で社宅の整備に力を入れる大企業が多くありました。お客様との会話や、新聞などからそうしたニーズがあることを知り、企業の人事部にアプローチして「社宅建設」という新市場を開拓していきました。当時の上司は私の行動を、「鉄砲玉みたいな奴だな」と言いながらもあたたかく見守ってくれていました。今でも感謝しています。

住友商事時代を語る上では独身寮生活でのエピソードも欠かせません。留学を決意したのも寮のコミュニティがきっかけ。MBA取得のために留学した先輩たちが、別人になって帰って来ました。聞くと、パイオニア精神を持つアメリカ人クラスメートたちの「自分のキャリアは自分で拓く」という風土に感化されえたとか。住友商事からは企業派遣も検討いただけましたが、「近い将来起業したい」という夢もあり、6年間務めた住友商事を退社し、ニューヨークに渡りました。

林 浩喜 インタビュー③

何よりも大切にしたのは“人”

MMH取得後、経営面のことだけを知っていても現場を知らなければ経営者は務まらないと思い、2年間在米し、3社のフードサービス店で店長として勤務しました。リテール事業は現場が全て。お客様に良い商品やサービスをお届けできるかは、全て現場のテンションにかかっています。店長として現場スタッフのモチベーションを上げるためのコミュニケーションや、適切な人員配置などのマネジメント面を学びました。

そうして1997年に『BAGLE&BAGLE』を創業することになります。BAGELの初体験は、インターンで住友商事の東京本社に来ていた米国人学生と数年後、ニューヨークで再会した時のこと。私は出張で訪れており、わずかな時間しかなかったのですが、最終日に彼がベーグル屋さんに連れて行ってくれました。当時の日本では全く流通しておらず、「パンにサーモン?」となんとも斬新な印象を受けました。しかし、一口食べたときの衝撃たるや。新鮮なサーモンにマッチするクリームチーズ。その繊細な美味しさに言葉が出ませんでした。

それから時が流れ、在米時にベーグル店の店長を勤めていた時、お客様が目の前で食べている姿を見ているうちに、自分が初めて食べた時の原体験を思い出したんです。「この美味しさを日本の人たちが知らないのはもったいない!」「ヘルシーなベーグルは健康トレンドにも乗っている!」と。ベーグルの伝道師になりたいと思いました。

幸い、創業後は順調に店舗数を拡大し、10周年を迎えた頃には上場の話もありました。この頃は株主の発言権が増し、「会社は株主のもの」という考え方が急激に広まった時代。それまで培ってきた独特の社内文化を大切にして、スタッフが楽しく自分らしく仕事をすることを第一に考えたら、株式公開は思いとどまるべきだと、上場を直前にキャンセルしました。その後さらに店舗数も増え、ホールセール事業やオンライン販売なども始まりました。新市場の創出という満足のいく結果を得て、今後は、自分の情熱を教育に注ぎ込みたいという思いが強くなっていき、20周年を機に、信頼できる企業に事業を譲渡し、私は一線を退きました。

林 浩喜 インタビュー④

左上:コーネル大学大学院の卒業式にて
右上:住友商事砧寮の竣工式にて(本人:後列右端)
下:『BAGLE&BAGLE』新宿御苑1号店のオープニングにて(本人:前列右)

第二の人生は、
「社会性」をキーワードに

新しいことをやる上で、教育に加えてもうひとつ軸足を置いていたのは、「社会性」というキーワードです。そんな時に選択肢として浮かび上がったのが社会貢献に繋がる事業を起こす「社会起業家※」という存在です。たまたま社会起業大学の前を通りかかり、その名前にピンと来るものがあり、何かに導かれるかのように入学しました。そして入学1週間後に学長就任依頼の打診があり、半年後に正式に就任するとともに最終的には事業継承し、法人化も果たしました。新体制でミッションやプログラムを一新し、実質的には第2創業となりました。

※社会起業家:利益の最大化や事業の拡大を主目的とする従来型の起業家とは異なり、SDGsに代表されるような社会課題を解決するためにビジネスに取り組む起業家のこと。経営戦略の大家マイケル・ポーターは、「社会課題の解決は今後大きなビジネスチャンスになる」と明言している。

「社会性」は現代を語る上でもう欠かせない要素となっているのは皆さんもよくご存知だと思いますが、まさにここは社会性を生み出していく場所。受講者たちは、自分のやりたいことを通じて社会に貢献していくために日々勉強しています。その背中を押しながら、私自身も自分の指名にやりがいと喜びを感じる日々で、「チャレンジャーを育成するチャレンジャー」といったところです。

私の起業の原点には祖父の存在がありますが、それ以外にも、「自身の評価判断を人に任せたくない」という気持ちもあったのだと思います。苦労も多いですが、自分の歩む道は自分で切り拓きたい。それが良い悪いではなく、自分には向いていたんだろうと思います。

今、もし「やりたいことがある」気持ちが燻っている方がいたら、自分で切り拓くことをお勧めします。独立起業でなくても、例えば社内で新規ビジネスを起こしたり、まったく新しい市場を開拓したりすることだってできると思います。本来それが商社のミッションでしょうし、そうした商社パーソンがもっと増えていけば、もっと新しいことが生まれ、もっと面白い世の中をきっと実現していけると思います。

林 浩喜 インタビュー⑤

社会起業大学の入学式にて

林 浩喜 インタビュー⑥

授業風景

あなたにとって
住友商事とは?

建設に例えると「基礎工事」。
今の自分の土台を築いた場所

ビジネスの基礎は住友商事で学びました。やはり社会人の入り口として、最初に働いた会社での経験は大きかったです。業務で学んだこと、当時の上司たちに指導していただいたこと、すべての経験値が今の私へと繋がっています。そして住友商事が最初の職場であったという誇りがあります。

だから今回、古巣である住商さんのお役に立てる機会をいただき、こんなうれしいことはありませんでした。ぜひ皆さんも社会起業大学のプログラムを受けに来てください。若い人にとっては今の仕事にも生かせる知識が身につくと思います。私と世代が近い方々には、これまでの経験の蓄積がたくさんあると思います。その知見を生かして第2の人生を社会貢献ビジネスに使いませんか。ご連絡をお待ちしています。

林 浩喜 インタビュー⑦