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社会的企業用語集

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コーポレート・ガバナンス

コーポレート・ガバナンス (英語:corporate governance) とは、企業の経営を監視・規律すること、又はその仕組みをいう。企業統治(きぎょうとうち)とも訳される。

概要


コーポレート・ガバナンスという概念は、1960年代のアメリカで、企業の非倫理的・非人道的な行動を抑止すべきであるという文脈で用いられるようになり、次第に粉飾決算など投資家から見た企業不祥事を防ぐためにどうするかという意味でも使われるようになった。さらに、企業価値・株主価値を増大させるためにいかに企業組織を構築するかという意味も加わるようになった。1980年代から1990年代のアメリカでは、企業買収が進んだことや、機関投資家の発言力が強まったことにより、コーポレート・ガバナンスへの関心が高まった。1990年代以降は、ヨーロッパ諸国や日本でも、多数の企業不祥事が発覚するとともに、経済的な停滞が続く中、コーポレート・ガバナンスが注目されるようになった(⇒#歴史)。

現在、コーポレート・ガバナンスの目的は、(1)企業不祥事を防ぐということと、(2)企業の収益力を強化することという2点にあるとされている。また、それらを社会全体の視点から見た議論と、投資家の視点から見た議論がある(⇒#コーポレート・ガバナンスの目的)。

そして、そのために、様々な法制度、組織内の制度、またインフォーマルな慣行が設けられている。それらを性質によって大きく分けると、トップ・マネジメント組織を通じて行われる組織型コーポレート・ガバナンス、証券市場を通じて行われる市場型コーポレート・ガバナンス、そして経営者に対し経済的インセンティブを付与する方法がある(⇒#コーポレート・ガバナンスの方法)。

しかし、このようなコーポレート・ガバナンスのための諸制度・慣行を設計し、実施する上では、株主、債権者、従業員などといった様々な利害関係者(ステークホルダー)の利害が衝突する場面がある。例えば、企業買収によって新たな株主が経営者を交代させることができるというのは、重要な市場型コーポレート・ガバナンスの制度であるが、自分たちが会社を所有していると考える従業員らからは反発を招くことがある。そこで、誰がコーポレート・ガバナンスの主権者かという問題が生まれる。これは、「会社は誰のものか」という問いとも置き換えられ、多くの議論を呼んでいる(⇒#コーポレート・ガバナンスの主権者)。

アメリカにおける発展


企業について「ガバメント (government)」又は「ガバナンス (governance)」という言葉が用いられるようになったのは、1960年代のアメリカ合衆国であった。ベトナム反戦運動の中でのナパーム弾製造に対する批判、公民権運動の中での黒人雇用差別に対する批判、消費者主権運動の中でのゼネラルモーターズ (GM) の独占や自動車設計ミスに対する批判、また各地での公害問題に対する批判が巻き起こり、政府の介入によって企業の非倫理的行動や非人道的行動を抑止すべきであるという観点からこれらの用語が用いられたと考えられている菊澤 (2004: 12-14)。。

1970年代には、オイル・ショックとそれに続く不況の中、リチャード・ニクソン大統領再選委員会への違法献金、ロッキード事件など、企業の贈賄・不正献金事件が相次いで発覚した。このような社会倫理問題としてのガバナンス問題と同時に、ペンシルバニア鉄道の倒産や、ロッキード・エアクラフト社の経営危機に際して、粉飾決算やインサイダー取引が行われていたことが発覚し、投資家の観点から見たガバナンス問題も問われ始めるようになった菊澤 (2004: 15-17)。。

1980年代には、アメリカで大規模な企業買収 (M&A) が進み、企業の経営者は証券市場で敵対的買収の危険にさらされるようになった。一方で、敵対的買収を防ぐために、多くの企業でポイズン・ピル(毒薬条項)などの買収防衛策がとられるようになったが、これは経営者が自己の利益のために地位にしがみつくことを許すもので、株主の利益を損なう可能性があるものであった菊澤 (2004: 17-19)、田村 (2002: 28-29)。。

そうした中、1980年代から1990年代にかけて、年金基金などの機関投資家がコーポレート・ガバナンスの上で大きな役割を果たすようになった。1974年のエリサ法(ERISA法)によって、年金運用者の受託責任が定められた。また、1988年にアメリカ合衆国労働省が出したエイボン・レターによって、資産運用を受託した機関投資家は委託者に代わって運用対象となっている企業の議決権を行使するよう勧告された。これらによって、年金基金などの機関投資家は、株式運用に当たって株主価値の増大を強く意識するようになり、企業に対して利益向上への強い要求をするようになった。このような市場からの圧力を受けて、アメリカの企業ではリストラ(企業の再構築)が進み、また、1990年以降、多くの企業でポイズン・ピルを撤廃する株主総会決議が行われた。さらに、1990年代初頭には、GM、IBM、アメリカン・エキスプレスなどの大企業で、投資家の後押しを受けた社外取締役によってCEOが交代させられるという事件も起こった。こうして、1990年代のアメリカでは機関投資家と社外取締役の活動を通じたコーポレート・ガバナンス体制が整備されていった菊澤 (2004: 17-20)、田村 (2002: 25-32)。。

現在、企業のコーポレート・ガバナンスに積極的に注文を付け、指導的な地位を有している機関投資家が、カルパース(カリフォルニア州公務員退職年金基金)である。カルパースは、長期安定投資家として投資先企業を育てていくとの基本方針の下、業績に問題のある企業のインベスター・リレーションズ (IR) 部門と接触して問題点を洗い出し、経営刷新が行われていないと見られる企業名を公表するなど、コーポレート・ガバナンスの改善を推進している田村 (2002: 33-36)。。

国際的な広がり


1990年代以降、アメリカだけでなく、イギリス、ドイツ、フランスなどヨーロッパ諸国、また日本などでもコーポレート・ガバナンスの問題が注目されるようになった。

そのような中、経済協力開発機構 (OECD) は、1996年の閣僚理事会での要請により、コーポレート・ガバナンスに関する経済諮問グループを設置し、国際的コーポレート・ガバナンス問題に取り組むことになった。米欧日の6名のメンバーで構成された経済諮問グループは、経営実務家による討論集会などを経て、OECDに対し「コーポレート・ガバナンス:グローバル市場における競争力向上と資本参入」と題した報告書を提出した平田 (2001: 278)。。これを踏まえ、OECDは、1998年4月、特別プロジェクト・チームを設置して「コーポレート・ガバナンス原則」の作成に当たらせ、1999年5月閣僚理事会でこれを承認した。同原則は、政府間組織の主導によって初めて作成されたコーポレート・ガバナンスに関する原則であり、拘束力はないが、各国政府や民間部門が基準(ベンチマーク)として利用できることを期待したものである。そこでは、望ましいコーポレート・ガバナンスのモデルは唯一ではないが、望ましいコーポレート・ガバナンスに共通するのは株主の利益を最優先していることであるとした上で、(1)株主の権利の保護、(2)すべての株主の公正な取扱い、(3)利害関係者の権利の認識と、コーポレート・ガバナンスへの参加、(4)情報開示と透明性の確保、(5)取締役会の責任という五つの原則、そしてそれを具体化する勧告を示している平田 (2001: 285-91)。。2004年には、社会状況の変化を受けて内容を強化した「コーポレート・ガバナンス原則改訂版」が発表された{{Cite web |url=http://www.oecdtokyo.org/theme/corp-g/2004/20040422revised.html |title=OECDコーポレート・ガバナンス原則改訂版 |date=2004-04-22 |publisher=OECD東京センター |accessdate=2009-05-13 }}。

世界銀行とOECDは、1999年6月21日、「グローバル・コーポレート・ガバナンス・フォーラムの設立に関する申し合わせの覚書」を交わし、OECD原則を出発点として、OECD加盟国・非加盟国の政府によるコーポレート・ガバナンスの改革のために対話と協力を拡大することを確認した平田 (2001: 291)。。

機関投資家も、国境を越えた投資の増加により、コーポレート・ガバナンス強化に向けて国際的に連携するようになった。1995年には、アメリカをはじめとする各国の機関投資家によってインターナショナル・コーポレート・ガバナンス・ネットワーク (ICGN) が組織された田村 (2002: 46)。。そして、1999年7月、OECD原則を世界中の企業や投資家によって受け入れられる最低基準であり、共通基盤であるとしながら、更にこれを拡充したグローバル・コーポレート・ガバナンス原則を採択した平田 (2001: 291)。。2001年7月には同ネットワークの大会が東京で行われ、日本におけるコーポレート・ガバナンスの動きにも影響を与えた田村 (2002: 46)。。

もっとも、実際のコーポレート・ガバナンスのあり方は、各国の会社法制、企業の資本構成、長年の慣行などにより異なる。日本では、高度成長期に、日本的経営と呼ばれる独特の企業慣行が形成されており、そこではメインバンクによる日本型コーポレート・ガバナンスが行われていたと説明されるが、メインバンクによる企業監視力が落ちたことにより機能不全に陥っているとも指摘されており、日本の多くの企業はコーポレート・ガバナンスの変革への要望にさらされている(⇒#日本)。

課題


アメリカでは、2001年12月にエンロン社、2002年7月にワールドコム社が相次いで倒産し、多額の粉飾決算が判明したことで、アメリカの資本市場に対する信頼が崩れ、会計、監査及びコーポレート・ガバナンスに対する不信感が高まった。これを受けて、会計、監査、ガバナンスの三つの分野にわたる改革として、2002年7月、サーベンス・オクスリー法(SOX法)が制定された。日本でも、2004年10月に発覚した西武鉄道
の「株主の状況」不実記載問題や、それに続くカネボウ(2005年9月)、ライブドア(2006年1月)の有価証券報告書虚偽記載問題を受けて、2006年6月に日本版SOX法とも言われる金融商品取引法が成立した町田 (2008: 66-69)。。このように、現在もコーポレート・ガバナンスの強化への要求は強まっている。

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