企業訪問レポート

株式会社北海道健誠社

北海道スタディーツアーの最終コースは、知的障害者の就労で大変な成果をあげている、北海道健誠社を訪ねる。

ツアーバスから健誠社のバスに乗り換えると、一瞬地元のバスガイドさんかと思える、しかしやはり会社の関係者(もしかすると瀧野一族の人か?)だよなぁ〜という女性が、施設の説明をしてくださった。バスガイドかと見まがう声の張りと施設を説明する誇らしげな姿から、やっぱり会社の人だよなぁと.....。

北海道健誠社は平成4年6月に設立。現在従業員は187名。うち35名が知的障害者だ。 病院・医院・老人施設・障害者施設・ホテル・旅館・ペンション・学校などと取引のある、平たく言えばリネンサプライ・クリーニング事業を営む会社である。平たくと言ったのは、とりあえずそうでも言っておかなくてはならないくらい、その事業を支える事業が多岐にわたっているためである。

例えば、広大な敷地に立つ本社社屋の他に、業務に大きく影響するボイラー施設があるが、そのエネルギー源としては、従来使用されていた重油から、木材を燃やしてボイラーを稼動させるバイオマスボイラーへの切り替えが行われている。これまでは、重油が燃焼したときに発生するCO2は、単純に大気中に撒かれていた。健誠社試算では、平成18年度重油を使用していた時のCO2排出量は2,441トン。バイオマス燃料を使用時の平成19年度のCO2排出量は81トンとなり、2,360トンもの削減を成し遂げている。
地上にある生物中の炭素は、大気中の二酸化炭素を植物が光合成で固定したものであるため、燃焼して二酸化炭素が発生しても、大気中の炭素量は変化せず、実質的に増えることはないという「カーボンオフセット(炭素の中立)」という発想に基づいている。

もう1つ。バイオマス燃料の製造部門としての、上記ケンセイシャフォレスタ株式会社が環境事業だとすると、そこから本社社屋へと向かう途中にその雄姿が垣間見れる、共生型集合住宅「ひがしかぐらふらわーはうす」。いったいクリーニングとどんな関係があるんだ〜と叫びたくなると思いますが、まぁ焦らずに。こちらは健誠社が推進する社会貢献事業のひとつなのである。コンセプトは高齢者も障がい者もお互いが共に生活する場所というものである。この施設以外にも特定障がい者福祉サービス「ケンセイシャレバレッジ」、高齢者福祉サービス「ケンセイシャサポート」、共生型地域交流館「のんの」などがある。バイオマスから福祉事業まで、一体全体この会社はどんなビジョンを描いているのだろう。期待に胸を膨らませて今度は本社クリーニング工場へと見学に向かう。
ここでは知的障害者の方が、社員と共に元気一杯に働いている。工場内は正に暑いの一言だったが、そこでは多くの従業員が活き健康に働いていた。暑い、過酷な労働の中、見学者の私たちに、嫌な顔ひとつせずに、「こんにちは」と挨拶してくれる。その表情を見るだけでも、仕事にやりがいを持って働いているのがわかる。

ご案内して下さった従業員の方の、「どなたかこのおしぼり機(おしぼりを綺麗にまるめる機械)に挑戦してみませんか?」との呼びかけに、なんと田中理事長がいの一番に手を挙げると、参加者も次々に参戦。やり方の説明を熱心に聞いていた。

やってみると案外難しく、普通綺麗に巻かれずに先が尖ってしまうのだと説明があった。理事長をはじめ参戦した見学者の皆さんは、意外に上手にやってのけ褒められていた。流石いつもは社会で百戦錬磨の起業家たちだけあって、丸め込むのはお得意らしい(>_<)

冗談はさておき、写真のようにどっさりと積まれたおしぼりを見事な手さばきで集中して作業するさまは、とても尋常とは思えず、ひとつの才能と思えるほどずば抜けている。障害特性を活かす場作りとしては、大変に勉強になった。働く皆さんの生き生きとした姿が印象的だった。
移動して案内されたのは、多くのクリーニングのための荷物が届く、言わば配送センターのような場所。山積みの荷物の中で紹介されたのが、知的障がいや自閉性障がいのある者のうち、ごく特定の分野に限って、常人には及びもつかない能力を発揮するサヴァン症候群のSさん。
彼は、誕生日を言っただけでそれが何曜日か瞬時に答えてしまうという驚くべき記憶力の持ち主。その記憶力を活かして、山のように届く荷物を、何処から来た物か、どこへ行く物か簡単に見分けて、次々と仕分けしていってしまう。この日も、見学者が伝える誕生日に対して、いとも簡単に曜日を的中させて、拍手喝采となった。 私の職場にも辞書を丸ごと暗記している方がいる。その方に漢字を聞くと、その漢字の発祥の意味まで教えてくれるという具合だ。我々は正に脱帽。
次に訪れたのは、シーツやシャツ、浴衣を一瞬にして綺麗に畳んでくれるマシーンの前で立ち働く皆さんのところだった。素晴らしく慣れた手つきで次から次へと山積みされたシーツを機械に取り付けていく。その集中力は大変なものだと思う。何しろ空調は効いていてもただでさえ暑い職場で、何百枚もあるシーツをひたすら取り付けていく、単純な作業であるけれどずっと続けるには、やはり並の集中力ではないと思う。 ここでは案内の方が、彼らとの競争をしましょうと申し出た。再び見学会参加者から元気に手が挙がる。興味深くて仕方がないって感じで、流石社会起業大学校生(笑)。

まずはしっかり説明を聞いて、準備は万端!? 本番ともなれば、バッチリ! いやいや、そうはいきません(涙)

ねぇねぇ、これどうやるんだっけ?早く! 早く! 応援する仲間の声も昂ります。

もちろん勝利は健誠社社員の障がい者。負けは社会起業大学の起業家!!
さて、イベント会場の様な職場から、一転静かな視聴覚室のような会場に通された私たちは、ここから驚くべき光景を見ることになります。 中央に立っていた歌のお姉さんのような雰囲気の(おそらくは瀧野一族であろう...)従業員の女性が、いきなり「皆さ〜ん、今日はわくわくさまでした〜」と、何やら意味不明な言葉を元気一杯に叫んだではないか。一瞬場内は「???」の空気に包まれる。
その女性曰く「普通はここでお疲れさま〜と言うのが、皆さん、普通の光景だと思いますが、わが北海道健誠社では、お疲れ様と言う代わりに『わくわくさまです』と、言います。労をねぎらう言葉であるお疲れ様と言う言葉ですが、疲れてもいないのにこの言葉を投げかけられても、と疑問に思っていました。そこで!私たちは「常に楽しく生きていたい、何事にもワクワクしていたい!」という思いを込めて、「わくわくさまです!」という合言葉を社内で交わしています! さぁ、皆さんも元気一杯に一緒に叫んでみましょう〜」
歌のお姉さんばりに元気の良いその女性に誘導されるまま、私たちは「わくわくさまです!!」と、元気一杯に叫んでいました。するとその女性は「素晴らしい! これまでこんなに大きな声でおっしゃって頂いた見学者はおりませんでした〜」と感激していた。社会起業大学の人ってどうしてこんなに素直なんだろう〜。一歩間違えば新興宗教じゃんか。でもその講演の後もみんな事あるごとに「わくわくさまです!」と言っていたが......。
続けて登壇した瀧野兄弟は、まるでお笑いのナイツの様な人たちだったが、ここにきてようやく北海道健誠社が目指すべきミッションが見えてきた。
「わくわくのチカラ」のミッションは、出会った人たちを笑顔にすることだったのだ。
知的障害者を雇用するのもそのミッションの達成のためであるが、実はその出発は彼らのお母様が障害者の授産施設に勤めておられたこともあり、常々お母様が、「彼らにも仕事さえあれば自立した生活ができるのに。」と仰っていたのを受けて、社会問題に目覚めたともいえる。

障がい者と健常者が一緒に働くことで気づきがあり、出来ないことをおぎなうことでチームが生まれると力強く語られていたのが印象的だった。
また、ビジョンを明確にするには、@ビジョンを持つこと Aビジョンを達成できると信じること Bビジョンを支えてくれる仲間を持つこと C諦めないこと であり、まわりを動かす本気度をどうやって伝えるかであるとも話された。 しかし、理想と現実の壁がある。つまり社会性と経済性をどう両立させるかだ。そこで北海道健誠社では、特別な評価シートを作っているとの事。

縦軸が売上であり、横軸が価値への取り組みと人材育成。価値への取り組みとは、他の人に対して良い事をしていたり、社会に対してよい取り組みをしたりすることへの評価だそうである。どんなに売上がよくても横軸が低いと、良い評価には繋がらないという仕組みだ。 企業の役割とは、@個人の貢献(役割)を明確にする A個人の貢献をチームの成果にする B個人の成長を促進させる ⇒ 『できない人』がいるのではなく、『教え方が下手な人』がいるのだ。
従ってリーダーの役割とは、できないことを教えるのではなく、できることを探すのだ。つまり強みというものを意識させる。これがリーダーのあり方です、と。

私がこの北海道健誠社を訪問して感じたことは、彼ら幹部にとって障がい者と出会えたことは幸せなことだったと思う。
それは、私が20年前に彼ら精神障がい者という方々と出合った事と同じだと思う。
彼らと出会うまでの30年間は、いっさい精神障がいについて全く知らなかったし、出会う機会すらなかった。彼らとの出会いがなければ、私は社会起業大学に入学していないだろうし、沢山の仲間にも出会っていなければ、起業しようなんて考えもしなかったろう。つまり私の人生は彼らと出会うことによって活かされているのだ。
北海道健誠社がこのままそのミッションの通りに、いつまでも彼らと共に働き、語り、生きていくなら、障害者雇用の世界も大きく変わるかも知れない。
いつか自分も障がい者の笑顔のために、経済性を生み出せる起業家になることを誓って、広大な旭川の地を後にした。

わくわくさまでした〜!!
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