<やまざき まことさん プロフィール>
横浜生まれ。大手エンジニアリング会社に20年以上勤務し、主に医療施設の建設や運営事業を担当するプロジェクトマネージャーとして活躍。社会起業大学に入学後、子どもたちの個性や才能を発見し、伸ばすための事業「ギフターラボ」を発表し、第2回ソーシャルビジネスグランプリにてグランプリ受賞。2012年、特定非営利活動法人Gifter LABOを設立し、同法人が開催するイベント「オンリーワン体験スクール」ではこれまでに250人以上の子どもたちが参加した。2015年会社を退職し、小中高生のためのオーダーメイドなものづくり研究室「ピカラボ」を開校。ギフターラボの活動に共感するプロボノ(専門知識やスキルを活かして社会貢献するボランティア)や地域企業を取り込んだ「他育カンファレンス」や「コミュニティカレッジ」等、子どもたちの独自なニーズに応えるためのプラットフォームづくりも押し進めている。

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すべての子どもたちの「好き」を育てたい

 私の子どもたちは、小中学校の授業に参加することができず、これまでホームスクーリングを中心に日々を過ごしてきました。彼らは、人がたくさんいる場所に行くことや、コミュニケーションをとることなどが苦手なため、学ぶ機会が限定されていました。
 しかし、うちの子どもたちのように「学校」という枠組みに馴染めないお子さんたちの中には、自然科学への高い関心や、豊かな感性を持ちあわせており、上から押し付けられたことではなく、自ら動機を持てるものに対しては「本物志向」の関心を持って取り組む姿勢をもっています。従来の年齢相応で平均点重視のカリキュラムではなく、その子にあった独自のカリキュラムを作り専門的に伸ばせる環境を作ることで、すべての子どもたちの可能性を育てていきたいのです。
 これは僕が造った造語ですが、専門的スキルを持つプロフェッショナルな方を「ギフター」と呼ぶことにしました。つまり「ギフターラボ」は独自の才能を伸ばしたい子どもたちと、それを伸ばせる可能性を持つギフターをつなぐ学びの場、実験室のようなものなのです。

起業に最も必要だったのは、方法論の前に“志と覚悟”

 社会起業大学に入った頃、僕は前職で10年以上プロジェクトマネージャーの仕事をしていました。事業計画書は作成する機会も多かったので、あまり学ぶ必要はありませんでした。またMBAにも興味はありましたが、方法論だけ学んでもやる動機や目指すべきものがわかっていなければ意味がないだろうと思っていました。おそらくその頃の僕が必要だったのは、自分の志の明確化とその覚悟、そしてそれをサポートしてくれる仲間たちだったと思います。
 当時の同期生は、入学した動機も想いも本当に様々で、とても刺激的な環境でした。「会社ではこんなこと言えないんだけど、ここでは言えるよね」とよく皆で口を揃えて言っていました(笑)。「自分をオープンにできるよね」と。なかなかこのようなことを話せる環境はありませんでしたから。


 卒業発表として参加した第2回ソーシャルビジネスグランプリでは、約500名の方を前にプレゼンする機会を頂きました。それまではどこか遠慮して自分の言いたいことを言えないことがほとんどでしたが、その場では「もう全部言ってやろう!」とそれまで抑えてきた色々な感情がこみ上げてきて、熱く語っていました。本当に“伝えたい”との想い一点で、プレゼンテーションの定石もどこかに吹っ飛んでいましたが、初めて自分を大勢のみなさんの前でオープンにできたと思います。その結果、共感して下さる方も多かったようで、グランプリを受賞することができました。
 その時に審査員だった田坂広志名誉学長に「これは本当に必要な事業だから、ぜひ実現してください」とのお言葉を頂き、今でもずっと心に残っています。これまで大変なこともありましたが、この言葉のおかげで「やらなきゃいけない」という意志を継続できてきたように思います。

 卒業してからは、年2回ギフターラボのイベントを開催しています。毎回十数個のプログラムの中から子どもたちが興味や関心のあるものを数種類選び、学習面以外の様々な側面から、自分の夢中になれる体験をしてもらうことが目的です。これまで6回開催してきましたが、最近では沖縄、関西、北陸からも参加して頂けるなど、この事業の社会的なニーズがさらに増していることを感じるようになりました。サラリーマンのまま続けることも可能でしたが、いつも単発のイベントで終わってしまうことに、非常にジレンマを感じていました。もっと、継続的に子どもたちの将来を一緒に考えたいと、思い切って会社を退職することにしました。


 退職後、横浜に子どもたちが定期的に通えるオーダーメイドなものづくり研究室「ピカソものデザインラボ」を開校しました。「子どもは誰でも芸術家だ。問題は大人になってからも芸術家でいられるかだ。」とのピカソの名言からスクール名を考えました。子どもたちの創造性を絶やさないことが、将来自分らしく社会で活躍・貢献できることに繋がると考えています。私の中学生の長女はホームスクーリングをしておりますが、裁縫、料理、イラスト制作など自分の好きなことに多くの時間を使って本気で挑戦し、どんどん腕を磨いています。14、5歳までに好きなことに夢中になった経験が、その後の人生を切り開く大きな力となることは、多くの著名人の歴史を振り返っても明白です。勉強はもちろん大事ですが、一番大事な時期にほとんどの時間を勉強に使ってしまうことは、非常にもったいないと考えています。

 ピカラボは、小中高生が夢中になって「つくる」ものを見つけ、継続してもらうために、リラックスした雰囲気のクリエイティブ・ラウンジ”をコンセプトにしています。プログラミングやロボットなど、ものづくりの体験を深められる環境をオーダーメイドで提供しています。子どもたちの個性は多岐にわたりますので順次分野を拡大していくつもりです。
 NPOのイベント「オンリーワン体験スクール」とも連携することや、収益の一部をNPOに活用させて頂くことも考えております。もちろん、経営することは厳しさも伴いますが、この状況が新しい自分の才能を引き出してくれると信じて、皆さんの協力も得ながら、少しずつ形にしていきたいと考えています。 


 社会起業大学では、今でもプロボノとしてのご協力や、また理事の一員として運営の基盤作りを一緒に考えて下さる頼もしい仲間にも出会えました。この学校には「卒業生コミュニティ」というものがあって、そこに登録すると学校のセミナースペースや打合せスペースを無料で使用できたり、定期的に開かれる交流会などに参加することができたりと、卒業後も常に新たな人脈を築けます。

斬新なアイデアを求める企業とのコラボレーションを目指す

 「ギフター」であるプロボノは完全にボランタリーベースで参加して頂いているので、継続してご協力いただくためにも絶えず関係性を保っていくことが大切です。最近では懇親会等を通して横の繋がりが深まっており、必ずしも子どもが好きでなくとも会社という枠組みを越えた同志としての繋がりが楽しくて、続けて下さる方も多いようです。

 「他育カンファレンス」は、ギフターとしてこれまでご縁を頂いた方に、ピカラボに通っている子どもたちの研究の相談に乗って頂く仕組みです。研究の課題、研究を深めていった先の社会での見通し感、より多様な体験情報の提供など、子どもやその保護者だけでは解決が難しいことに対して豊富な社会経験に基づきアドバイスをしてくれるコミュニティです。私は前職で医療関係の仕事をしておりましたが、医療の世界では、チーム医療という仕組みがあります。そこでは、ドクターを始め看護師や薬剤師など様々な専門職の方が、一人の患者に対して最善の治療方法考える「ケースカンファレンス」という会議があり、それを子どもたちのよりオープンな学び環境として応用したいと考えています。子どもたちの強みを引き出す専門家チームと言えますが、才能ある子どもたちの独自なニーズに対して、より対応しやすくなるのではないかと思っています。


 また、ご協力頂いている企業やプロフェッショナルな方と提携して「“日本版”コミュニティカレッジ」を立ち上げることも構想中です。オンリーワン体験スクールでは彼らに体験プログラムを提供していただく機会が多いのですが、既存の画一的なアイデアに固執するのではなく、子どもたちの興味や独自の才能を生かすには企業内でどのようなことができるか、一緒に考えてもらう機会を通して、斬新なアイデアが生まれる企業風土づくりに生かしてもらえるのではないかと思っています。企業が求めるものを子どもに教えるというのが既存の教育体制ですが、逆に子どもを中心にして、ある才能を企業でどのように生かすかということを、一緒になって考えていただけたらと。「あ、うちだったらこういうことやってもらえばいいんだ」等、色々なアイデアを生み出すきっかけとしていただきたいのです。
 まだまだ根強い日本の教育制度における平均点主義を変えたいのですが、現状では突破できるだけの環境がまだありません。高校や大学まで進まないと専門的なことを学べず、それまでの間は皆と同じことを学ばなければならない。この日本版コミュニティカレッジは、小中学生やホームスクーラーでも受けられるような制度にして、早い段階から多くの専門性に触れてもらい、本物志向の子どもたちが夢中で好きなことに打ち込める環境を提供できたらと思っています。

社会起業大学は、”裸のまま”の自分を出せる場所

 社会起業大学は、僕にとって素直に自分を出せる場所です。素直に自分自身を見つめることで、自分にしかない強みを育てていく。それはこの学校の基本的な方針だとも思うのですが、起業するというのは初めてのことばかりなので、本当に自分がやりたいと思えるもの、強みを生かせるものを自分で認識してからでないと、志半ばで挫折してしまうことが多いのですね。
 僕の一番の強みは、僕自身が多様な個性を持った子ども2人を持つ親であるということです。そして、これまで海外で長く仕事をしてきた経験もあり、子どもたちの日常的なことに関する相談だけでなく、将来を見据えたグローバル社会との接点などについても親御さんの相談に乗ってあげられます。この強みを最大限に活かせているのも、「裸のまま」の自分をオープンにできるこの学校の存在や、仲間たちとの出会いが大きいと思っています。

(撮影・記事 堀口美紀 http://mikihoriguchi.com/blog/ )


卒業生インタビュー

入学した経緯、社会起業大学での経験などについて

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卒業生のビジネスプラン

2010年の開校以来、卒業生はすでに300名を超え、60を超える社会起業家を輩出しています。


  • 「若者が町の課題解決に活躍できる」社会を創る
    特定非営利活動法人SET
    理事長 三井 俊介さん


  • 大人のひきこもり オルタナティブ・ライフ・プログラム
    一般社団法人COYOTE
    代表理事 川初真吾さん


  • ミャンマーから医と食で命を繋ぐ
    NPO法人 ミャンマー ファミリー・クニックと菜園の会 名知仁子さん


  • 女性が育児と仕事を両立し、自己実現出来る社会をつくる
    Brilliant Mother 代表
    三輪 恭子さん


  • 個性あふれる社会を創る 「つなぎなおし」プロジェクト
    つなぎなおしプロジェクト
    代表 木戸佑兒さん


  • 学生と社会人で「何のために働くのか」を気楽に真剣に語り合う場
    ハタモク(NPO法人申請準備中)
    代表理事 與良 昌浩さん


  • 介護分野の人手不足を解消し、高齢世代の雇用を創出する
    株式会社かい援隊本部
    代表取締役会長 新川 政信さん

  • ビジネスパーソンがやりがいと使命感を実感できる社会づくり
    都内大手企業 CSR推進委員会事務局長 山田由美子さん